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コンピュータによる温暖化予測

 天気予報を見ると、明日が雨なのか、晴れなのか、およそのことがわかります。たとえば、「明日は午後から雨が降る」という予報をみたら、朝、学校や会社に行くときにカサを持って行こう!と考えることができますよね。同じように、地球の気候がこれから先どうなるかを予測することができたら、少しは対応できるようになるのではないでしょうか?

 世界中の科学者も同じことを考えて、最新のスーパーコンピュータを使って、未来の地球の気候を予測する研究をしています。日本では、国立環境研究所、東京大学、海洋研究開発機構が協力して2005年に高性能のスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を使って世界最高の精度(2006年4月現在)で温暖化予測の計算を行いました。

地球シミュレータ

地球シミュレータ © ESC/JAMSTEC
1秒間に40兆回もの計算ができるスーパーコンピュータ。体育館ほどの大きさの部屋の中に、640台の大型コンピュータが並んでいる。これら全てのコンピュータがつながって、ひとつの巨大なスーパーコンピュータとして機能します。100年分の予測計算をするのに、このスーパーコンピュータでも1ヵ月間かかると言いますから、膨大な計算量です。

 温暖化を予測するためには自然の変動だけでなく、人間の産業活動の影響をどう考えるかが重要です。そのために、いくつかの未来社会のシナリオを作って、コンピュータに計算させます。今回このアースリウムで見ることができる地球温暖化シミュレーションは、人間が今のまま高度成長社会を続けていくというシナリオに沿った計算結果です。その結果、地球の平均気温は工業化以前に比べて2028年に2℃、2052年に3℃、2069年に4℃上昇することがわかりました。

 今、世界では2℃という数字に注目が集まっています。気温上昇が2℃を超えると、人間社会に大きな影響(リスク)が出ると考えられているためで、ヨーロッパ諸国は気温上昇を2℃以下に抑えることを政策の重要な目標として定めました。「温暖化と言っても自分が死んじゃった後の話じゃないかなぁ」と思ってのんびりしていたら、とんでもない。実はそんなに遠い未来の話ではないかもしれません。

 もちろん、これはコンピュータの計算結果のひとつですし、気候のメカニズムはまだわかっていないことも多いので、必ずしもこの予測の通りになるわけではありません。でも、天気予報で「雨が降る」と聞いてカサを持って行こうと考えるように、「もしかしたら20年後に気候変動が激しくなるかもしれない」と言われることで、今から準備を始めることも可能なのではないでしょうか。
地球平均気温の変化予測 高度成長社会シナリオでの地球平均気温の変化予測
地球の平均気温が工業化前に比べて2℃上昇すると気候リスクが格段に大きくなると考えられています。2℃を突破させないためにどう行動すべきかが、いま私たちに問いかけられています。
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