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マルティン・ベハイムの地球儀

 世界で最初に作られた地球儀はギリシア時代に遡ると言われていますが、現存する世界最古の地球儀は、1492年にドイツ、ニュルンベルクでマルティン・ベハイムが作ったものです。今回のアースリウムでは、その地球儀に描かれた当時の地形をコンピュータ上で再現してみることにしました。

マルティン・ベハイム

マルティン・ベハイム

 1459年頃にニュルンベルクで生まれ、商業の道を歩んでいたベハイムは1484年にポルトガルのリスボンに赴き、うまく自分を売り込んで当時の国王ジョアン2世の航海委員会の委員になっています。実際に、いくつかの航海にも参加したようです。一時的にニュルンベルクに戻ったベハイムは、リスボンで聞いた世界の広がりについて触れ回り、その話を聞いたニュルンベルク市がベハイムに地球儀製作を依頼しました。1年近くかけて完成した地球儀は、直径50cmの金属製で、書き込まれた地名は1100カ所以上に及んでいます。赤道や黄道、南北回帰線、北極圏や南極圏も表示され、さらにラクダや人魚、帆船など111枚の細密画が添えられていました。この地球儀は現在もニュルンベルクのドイツ国立博物館に保存されています。

→ドイツ博物館に保存されているベハイムの地球儀

 ベハイムの地球儀はプトレマイオスの世界図に基づき、それを拡大したもので、南北アメリカ大陸はまだ存在せず、アジアが東側に拡大されており、太平洋はごく狭い海として描かれています。この地球儀を見れば、コロンブスが最後までアメリカ大陸がインディアス(アジア)だと思いこみ、マゼランが太平洋の大きさを侮って、積み込むべき食糧の分量を間違えて、飢えに苦しむ地獄の航海をすることになった理由もよくわかります。

ベハイムの地図

 大航海時代を通じて、こうした命がけの航海による実証と、その結果を受けた世界観の修正の繰り返しによって、徐々に正確な地球の姿が明らかになっていきます。その後、冒険航海は18世紀まで続きますが、経度を正確に計るクロノメーターなど地図作りに欠かせない新技術も開発され、地理的な謎はほとんど解き明かされるに至り、大航海時代は終わりを迎えます。
 左の地球儀で15世紀の世界の姿と冒険者達の航跡を見ながら、夢と野心に従い、苦難に満ちた航海に望んだ男たちの時代を、ぜひ想像してみてください。

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