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なぜ、どうして渡るのか?

渡り鳥はなぜ渡るのでしょうか?

 一般的には、エサを確保するためだと考えられています。北にいる鳥は冬が近づくと、エサの多い南に向かうのはごく自然に考えられます。夏に北に行くのは、日照時間が長くなるので、エサを確保する時間がたくさん取れ、そのため沢山のヒナを育てることができるからだと考えられています。実際に、ヨーロッパのコマドリが、北に行けば行くほど卵を産む数が増えているという調査結果もあるそうです。

 市田さんによれば「でもそれは一般的な説明であって、本当のところはよくわからない」とのこと。「たとえば、旅鳥と言われる鳥たちは、シベリアから南下してきて、日本で留まっていれば十分にエサが採れるのに、わざわざオーストラリアまで飛んでいく。キョクアジサシという鳥は、北極で繁殖して、南極で冬を越します。途中の場所で冬を越せば良いのに、なんでわざわざ南極まで行くのか、よくわかっていないんです。」

 まだまだ謎の多い渡り鳥なのでした。

渡りの技術〜鳥は鳥目ではない。

 渡りの技術についても、最近になってよくわかってくるようになりました。小鳥たちの多くは、ワシやタカなどの攻撃から身を守るために、夜に渡ることがわかっています。では、何を目印に旅をするのでしょうか。
 多くの人が鳥は夜はよく見えない(いわゆる鳥目)だと思っているのではないでしょうか。実はそれは間違いで、鳥たちはまさに「目」で世界を認識しながら夜の空を飛んでいるのだそうです。その目印は、北極星。渡り鳥をプラネタリウムに連れて行き、実験してみたところ、北極星を隠すと自分の位置がわからなくなることから、このことが実証されました。

 もちろん視覚情報だけに頼っているわけではなく、地磁気や日没の位置、においなども利用しているようですし、ルート情報が遺伝的に組み込まれているとも言われています。昼間に渡る鳥は、太陽の位置を基準にして、それを体内時計で補って飛んでいるようです。また、1年を経て、数万キロも旅をしながら、全く同じ場所(番地)にたどりつく鳥がいることから、かなり詳細な地図情報を持っているのではないかとも考えられています。いずれにしても、まだまだわかっていないことが多い分野で、これからの研究に期待されるところです。
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