絶滅する言語
現代における世界言語の最大の特徴は、話せる人の数が極端に偏っていることにある、といわれています。一方では数億人が話す巨大な言語があると思えば、数百人〜数千人しか話さないような言語が無数にあります。このような状態になった最も大きな原因は、過去100年間に爆発的に人口が増えたこと。しかも、その人口が偏った地域や集団で増えたことにあります。今、億を超える話し手を擁する言語が世界を席巻し、少数の話し手しかいない言語が絶滅の危機に瀕しています。その数はどれくらいになるのでしょうか。 2009年2月、ユネスコが世界で2500もの言語が絶滅の危機にあるという調査結果を発表しました。方言なども含めて、世界で6000以上の言語を対象に行った大がかりな調査で、危機の状態が5段階で評価されています。その結果は以下の通り。 1950年以後に消滅した言語 219語 日本では、8つの言語が危機指定されています。「極めて深刻な危機にある」言語としてアイヌ語、「重大な危機」には沖縄の八重山語、与那国語、「危機」には沖縄語、国頭(くにがみ)語、宮古語、奄美語、八丈語が、それぞれ指定されました(ちなみに、国際的な言語の基準では、日本には15の言語があるとされています)。 言語の絶滅とはどういうことでしょうか。多くの場合は、その言語を話す最後のひとりが亡くなり、後に引き継がれない場合に、言語が絶滅したということになります。もし話し手が少ない言語が、教育などを通じて次の世代に伝えられていなければ、話せる人は50年もすればあっという間にいなくなってしまい、想像以上に多くの言語が絶滅してしまうことになります。 現代は情報化、国際化の時代です。少ない人数しか話せない言葉よりも、多くの人とコミュニケーションできる言葉の方が便利なため、話す人が少ない言葉は淘汰されがちです。一説には2週間にひとつの言語が世界から消えており、21世紀の終わりには、わずか300程度の言語しか残らないという人もいます。言語は文化そのものです。言葉が消えると、同時に文化も消滅してしまうといっても過言ではありません。左の地球儀にマッピングされた11の言語が、巨大な言語の代表だとすれば、その影で今にも消えそうな6000近い言語があることにもぜひ目を向けてみてください。 |