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異常気象と気象災害

異常気象とは

 異常気象には、高温、低温、多雨、干ばつなどのように、長い期間で起きる現象と、竜巻、集中豪雨、濃霧など短い時間に起こる激しい現象の2種類あります。今回お話を伺った気象協会の下山さんによれば、最近はそのどちらも極端な現象が増えているといいます。

 今回のアースリウムで使用した気象庁の異常気象・気象災害分布図は、主に長い期間で起きる異常現象を示したものです。たとえばオーストラリアに注目してみると、2009年までは小雨が続いていましたが、2010年は一転して多雨になりました。この例のように、最近の傾向としては同じ地域でも大雨と乾燥があるなど変動が激しくなって、いわゆる「極端現象」が多く発生するようになっています。

異常気象の原因

 地球の気候は様々な要因が複雑に影響しあって常に変化しています。エルニーニョやラニーニャなどの海水温の変化、太陽の周期的な活動、火山の噴火といった自然の変動。地球温暖化による氷の融解、都市化によるヒートアイランド現象、森林伐採や砂漠化といった環境破壊など、人間の活動を起源とするもの。これらが複雑に絡み合って大気の循環に影響を与えています。

 複雑なだけに、なかなか予測が難しい現象もあります。たとえば近年の異常気象の原因としてよく話題に上るのが、偏西風の流れが蛇行した状態が長く続くブロッキング現象です。蛇行によって、高気圧や低気圧がブロックされて動きが鈍くなることから、この名前がついています。ひとたびこの状態になると、多雨や小雨などが長期間続き、洪水や干ばつなどの被害を引き起こします。また蛇行の状態によって、高気圧や低気圧がブロックされる場所が毎年変わるため長期予報を難しくしています。

ブロッキング現象の概念図

ブロッキング現象の概念図

異常気象による災害

 異常気象が増えることで、災害が頻発するようになり、またその規模も大きくなっています。たとえば台風やハリケーンがもたらす雨量が過去に比べて増えた結果、土砂災害も増えています。時間あたりの雨の量が増え、降る時間も長くなると、水が地面の奥まで浸透し、表面の土砂が流れ出すだけでなく、表面を支える岩盤もろとも山全体が崩れ落ちる「深層崩壊」と呼ばれる激しい現象も起きやすくなります。2009年に台風8号の雨が原因となって台湾南部で起きた深層崩壊では、人口500人の村が山崩れに飲み込まれて壊滅する被害になりました。日本でも国土交通省が「深層崩壊に関する全国マップ」を作成して警戒を呼びかけています。

深層崩壊の解説図

表層崩壊と深層崩壊のイメージ図(国土交通省の資料より)

 文明社会が原因となって被害を大きくしている側面もあります。2011年のタイ大洪水では、都市化によってコンクリートやアスファルト等で地面が固められた結果、流域に氾濫した水が土に染みこまず、行き場を失って広い範囲に被害が拡大しました。手入れが行き届かず放置されて、荒れ放題になった森が土砂災害の原因になることもあります。適切に間伐を行ない、木がしっかりと大地に根を張った森作りをすることで災害を防ぐこともできます。

 また、人口が増えて地球のあらゆる場所に人が住むようになったため、激しい気象現象が人や社会に被害を与える機会が増えていると考える人もいます。

タイ大洪水の写真

大洪水で水が溢れたタイの首都バンコク(アメリカ海軍撮影)

 物理的な被害だけでなく、健康被害も深刻です。洪水によってあふれた汚水が伝染病を引き起こしたり、気温上昇による熱中症も年々増えています。2010年には全国で5万人以上の熱中症患者が病院に運ばれ、亡くなった人は1700人以上に上ります。

 これらの異常気象はここ10年ほどの間に増加してきたケースが多く、これからさらに激しくなるのか、それとも収束するのか誰にもわかっていません。そもそも、人類が農耕を始めた1万年ほど前から現代までが、奇跡的に気候が安定していた時代だとも言われます(翌年の種まきや収穫の時期が予測できる農耕は、気候が安定していたからこそ可能になったのです)。

 これからは気候が大きく変動することを前提として考え、日頃から自然災害に対しての備えを怠らないことはもちろん、気候変動時代に適応する新しい社会のあり方を考えていく必要にも迫られているのです。

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