生物多様性ホットスポット
生物多様性ホットスポットとはどのような取り組みなのでしょうか?
元々は1980年代の後半にイギリスの生態学者、ノーマン・マイヤーズ博士が提唱した考えです。地球上の陸地のなかで、とても豊かな生態系があり、かつ危機的な状況に陥っている場所をホットスポットとして選び、優先的に保全を進めていこうという考え方です。当初は14-5カ所だったのですが、2000年に25カ所、2004年に34カ所、そして2011年に35カ所へと、その数を増やしています。世界中の様々な地域が選ばれているので、左の地球儀でご覧ください。
生物多様性ホットスポット地図
地球上に、生きものたちは均等に広がっているわけではありません。現在ホットスポットとして指定されているエリアは地球の地表面積のわずか2.3%ですが、その狭いエリアに、ほ乳類、鳥類、両生類の75%、維管束植物の50%が暮らしています。 ホットスポット選定の基準は、その地域にしかいない固有の植物が1500種以上あり、かつ、もともとの植生からは7割以上が失われている場所であることです。つまり豊かな自然環境があり、かつ危機的な状況にある、プラスとマイナスの両面を持ち合わせた地域が選ばれているのです。なかでも9割以上が失われている、特に危機的な状況にある場所は「Hottest of the Hotspots ― 特に危機的な状況にあるホットスポット」と呼ばれています。 なぜ、生物多様性ホットスポットが指定されたのでしょうか。 私たち人間の暮らしは、食べ物はもちろん、衣服や、住居、生活用品、薬に至るまで、そのほとんどが生きものたちの恵みによってもたらされています。たくさんの種類の生きものたちが健全な生命活動を行うことで、初めて私たちの暮らしも成立しているのです。しかし、本来豊かだった自然環境は、行き過ぎた森林伐採や化学物質による汚染など、人間の開発によって危機的な状況に陥っています。 その状況を改善するためには、自然環境を保全する活動を行う必要があります。しかし、保全のために割けるお金や時間や人手はどうしても限られてしまいます。そこで、生物多様性ホットスポットを指定して優先順位を付けることで、効率的、効果的な保全を行おうと考えたのです。 この考えに基づいた具体的な行動として、CIが世界銀行に呼びかけ、日本政府、フランス政府、アメリカのマッカーサー財団などが中心になって設立したCEPF(Critical Ecosystem Partnership Fund)という基金があります。設立から10年で235億円を集め、ホットスポット保全のために活動する1550以上の団体を支援しています。 なお誤解はしてほしくないのですが、ホットスポットに指定されていないところが大事な場所ではない、という意味ではありません。「生物多様性ホットスポット」は地球規模で見て国境を越えるような広いエリアで区切って選ばれていますが、より細かいエリアで区切って重要な保全地域を把握する試みも行われています。たとえば、WWF(世界自然保護基金)が提案しているエコリージョン、バードライフ・インターナショナルが取り組むIBA(Important Bird Area)、KBA(Key Biodiversity Area=生物多様性重要地域)などが例としてあげられます。
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