ホットスポット世界の旅(1)
35ヵ所の生物多様性ホットスポットから6地域を選び、地球を一巡りしてみましょう。 生物多様性ホットスポットの特徴である、その地域の豊かさと危機的状況の両面について、そして現地で行われている取り組みを簡単にまとめてみました(写真提供:コンサベーション・インターナショナル)。
26 フィリピン
豊かな多様性 フィリピンは7100を超える島があり、数百年前にはほとんどの島が熱帯雨林に覆われていました。6000種以上の植物種と、ユニークな鳥や両生類が暮らしている場所です。
危機的状況 開発によって、現在は原生の森林は7%しか残されておらず、生きものたちは開発によって分断され、隔離されて狭くなった森でなんとか生き延びている状況にあり、世界でも最も危機的な状況にあるホットスポットのひとつです。
取り組み ルソン島北部のシエラ・マドレ山脈に位置するペニャブランカで、森林保全と地域経済を両立する森林再生プロジェクトが行われています。CIJの日比さんによれば、地元の人たちの生活を考えずにただ森を再生しても解決にならないと言います。貧困状態にあると、違法に伐採をして燃料にしたり、木を売ってお金にするというようなことが後を絶ちません。そこでもともとあった木を植えて、失われた森林を回復するだけでなく、木々の間に果実がなる木を植えるアグロフォレストリーと呼ばれる方法で地元の人たちが暮らしていける手段を提供、技術的な支援や違法伐採を見回るパトロール活動、薪ではなく籾殻を使うストーブを提供するなどの活動が行われています。
(上)フィリピン固有の絶滅危惧種、フィリピンワシ © Olivier. Langrand (下)ボホール島のチョコレート・ヒル © CI/ photo by Russell Mittermeier
5 コーカサス
豊かな多様性 5000メートルを越える大コーカサス山脈からコーカサス高原、トランスコーカサス低地帯まで、高度差があること、また年間雨量が150ミリしかない東のカスピ海沿岸の乾燥地帯から、4000ミリも降る西の黒海に沿った山地まで気象条件も多様で、多くの固有種が暮らしている地域です。
危機的状況 近隣にはアゼルバイジャン、アルメニア、グルジア、ロシアのチェチェンなどがあり、歴史的にも常に政情が不安定な地域。そのため、経済的な事情から行われる不法な狩猟や伐採によって、生きものたちが脅かされています。
取り組み この地域にはCEPFが支援し、3年ほどかけてエコシステム・プロファイルと呼ばれる調査活動と関係者を集めたレビューを行いました。関係が悪い国の研究者や行政関係者、NGOの人たちが、ホットスポットを守るという共通の目標を持つことで、少しずつ信頼関係が作られつつあります。人間同志の信頼関係が自然保護にとっても欠かせないということなんですね。
絶滅危惧種のヤマヤギ © Olivier. Langrand
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