ホットスポット世界の旅(2)
17 マダガスカル及びインド洋諸島
豊かな多様性 最も危機的な状況にあるホットスポット(Hottest of the Hotspots)のひとつ。1億6000万年前にアフリカから分離したために、独特の生態系として発展しました。動植物の8割以上が、この島でしか見られない固有種だと言われており、キツネザルだけで50種類以上暮らしているなど、霊長類がとても多い地域としても知られています。
危機的状況 もともとの生態系で残されているのは、わずか8%。貧しい人たちが多く、薪木を燃料にしたり、木炭を売ったりして生活をしているため、あっという間に森林が失われてしまいました。数年前にクーデターが起こったことで政治的にも不安定な状態が続いています。
取り組み マダガスカル中央部にある世界文化遺産の村アントエートラに近いフォヒソキナ中央高山帯で、絶滅危惧種のハーレクインアデガエルの保護活動を行なっています。もともとこの地域の人たちはこのカエルを捕獲して売ることで生計に役立てていました。そこで、逆にこの生きものを守ることで生計が得られる仕組みを開発しています。具体的には、地域コミュニティに環境教育と技術訓練を受けた地元住民のグループを作り、個体数の調査を行なったり、政府や自治体と交渉して土地利用の権利を地域に移譲し、エッセンシャルオイルの原料と成るラヴィンサラの栽培やコイの養殖などの産業支援を行なったりしています。またエコツーリズムの開発にも取り組むなど、持続可能な社会作りを目指しています。
(上)マダガスカルのシンボル、バオバブの木 © CI/ photo by Russell Mittermeier (下)50種以上も生息していると言われるキツネザル © CI/ photo by Russell Mittermeier
11 西アフリカ・ギニア森林
豊かな多様性 ガーナを中心に、西はシエラレオネから東のカメルーンまでの熱帯の森林地帯。特にほ乳類の多様性が高く、マルミミゾウやダイアナモンキーなど、特徴をもった動物たちが暮らしています。
危機的状況 この地域はチョコレートの原料であるカカオが重要な生産物で、コートジボアールとガーナの2カ国で世界の約半分の生産量を占めています。これまでは森を切ってカカオを栽培していたため、生物多様性は失われる一方でした。森が無くなると、水が無くなり、土地が枯れて、病気が拡がり、農薬や肥料の量が増える、そして新たな森を切る、という悪循環が起きています。
取り組み CIJのガーナでの取り組みとして、この悪循環を断ち切るために、森を切らずにカカオ産業を維持する方法を、農業技術の指導などを通して地元住民たちと一緒に模索しています。生物多様性が取り戻せるだけでなく、収量が増えて収入が増えると、子どもを学校に行かせることができ、よりよい生活ができるようになるため、周りの農家にも栽培方法が拡がり、好循環が生まれます。CIJの日比さん曰く、「ガーナの地元のNGOの能力も高くなってきた」とのこと。現在はCIJのガーナ事務所で働いていた地元スタッフが中心になって、地域に根ざしたNGOを作って自立できるようになったそうです。
(左)絶滅危惧種のコビトカバ © CI/ photo by Russell Mittermeier (右)実のなる木を植えるアグロフォレストリー © CI/ photo by Jason W. Anderson
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