ホットスポット世界の旅(3)
31 熱帯アンデス
豊かな多様性 アンデス山脈は南アメリカの西側を南北に貫く長い山脈で、西側はすぐに海につながり、東側はアマゾン川の源流に接しているエリアです。南北に長いため低緯度から高緯度まであり、また標高差が6000メートルを越える多様な生態系をもっています。メガネザルやオナガザルなどの固有種が暮らしており、アマゾンがあるため両生類のような水と関わりの深い生きものの種類が多いのも特徴です。また環境が厳しいため、まだまだ知られていないエリアも多く、今も新種が発見されるような地域です。
危機的状況 アマゾン川流域の人口が増えて、森を切って農地開発が盛んになってきたことが背景としてあげられます。80年代半ばから90年代にかけてはコカイン原料となるコカの栽培が盛んに行われていました。最近では、気候変動の影響でコーヒー栽培ができるようになり、栽培面積が急激に広がってきています。また石油や鉱物などの地下資源の開発圧力も強くある地域です。
取り組み アンデスでは、コーヒーの大生産地であるコロンビアや、ペルー、エクアドルなどで、森の中の日陰で育てるシェイドグロウンと呼ばれる方法など、森林破壊につながらないコーヒー栽培の取り組みが始まっています。現地での技術開発、能力開発、設備提供のほか、マイクロクレジットや助成金などによるお金の手当も行います。単位面積あたりの収穫量は減り、手間とコストもかかるため、一袋あたりの値段は高くなります。それでも買ってもらうために商品の環境価値を消費者に教育するなど、総合的な取り組みが必要です。たとえばスターバックスコーヒーなどがCIと組んで、こうした取り組みを行っています。
(上)南エクアドル・アンデス山脈の村 © CI/ photo by Robin Moore (下)アマゾン川の源流域は生物多様性の宝庫 © CI/ photo by Yasushi Hibi
16 日本
豊かな多様性 ホットスポットに日本全体が指定されていることに驚く人も多いはず。日本は国土の70%を森林がカバーしていて、元々はとても豊かな森林生態系が広がる国でした。南北に長く、南の温暖湿潤気候から北の亜寒帯地域まで、多様な気候と生態系が広がっています。日本に棲む脊椎動物の4分の1が日本にしかいない固有種なのです。
危機的状況 第二次大戦後に商用のためにスギやヒノキなどの針葉樹を大量に植林し、ほとんどの森林が失われました。また高度成長に伴う都市開発によって多くの自然が失われてしまいました。
取り組み 日本ではCIが中心になって、国際的な基準に照らしてホットスポットをさらに細かくエリアに分けていくKey Biodiversity Area(生物多様性重要地域)の選定に取り組んでいます。2011年に完成し、全国228カ所のKBAが指定されました。その半数以上がまだ保護区になっていないという結果が出て、今後の政策への反映が期待されています。
(上)絶滅が危惧される日本固有種のニホンオオサンショウウオ © CI/ photo by Russell Mittermeier (下)沖縄、ヤンバルの森 © CI/ photo by Yasushi Hibi
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