24歳のときにファシストに捕らえられ、強制収容所に送られながら奇跡的に生還した若者の手記。化学者であったためにガス室送りを免れたが、やはり収容所は「地獄の底」だった。信じがたいほど過酷な日常が淡々と描かれるが、後年付け加えられた後書きを除いてナチスを糾弾するようなくだりはない。しかし、いや、だからこそ、圧倒的な絶望と虚無感が心に響く。著者はその後、高名な作家となったが1987年に死去。自殺説もある。