Art & Design
2014.04.23 平澤 直子
Children of India:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Attila Siha
5月5日はこどもの日。「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」日として1948年に定められました。この日をこどもの日とするのは日本だけですが、他国にもこどもの日は存在します。そんな世界のこどもたちを題材にした「ゴー・ビトゥイーンズ展 こどもを通して見る世界」が、5月31日から8月31日まで、東京・六本木の森美術館で開催されます。
「ゴー・ビトゥイーンズ」とは「媒介者」の意。自身も移民である写真家ジェイコブ・A・リースが、英語が不自由な両親の橋渡し役としてさまざまな用務をこなす移民のこどもたちを指して呼んだ言葉です。本展では、こうした異なる文化間だけでなく、現実と想像、大人とこどもといった、あらゆる境界を行き来するこどもたちが放つ「生きるちから」に注目し、こどもの視点を通して世界を展望することを試みます。
また本展では特別企画として、こどもを題材にした世界各国の映画7本も上映される予定です。
子供の情景(イラン・フランス/2007年)
2001年にイスラム過激派タリバーンによって仏像が爆破されたアフガニスタンのバーミヤンが舞台。学校に行きたい6歳の女の子は苦労してノートを手に入れるが、タリバーンのまねごとで戦争ごっこをする少年たちにいじめられ...困難な環境で生きるこどもたちを淡々と描いた映画です。
ウリハッキョ(韓国/2006年)
ウリハッキョとは、「私たちの学校」の意。札幌の朝鮮学校に通うこどもたちの日常生活を追ったドキュメンタリー。こどもたちと先生、民族学校にこどもを通わせる親の心情が描かれています。日本各地で自主上映会が開催されました。
ハーフ(日本/2013年)
日本人と外国人との間に生まれたこどもを指す言葉「ハーフ」。この映画では、オーストラリア、ガーナ、メキシコ、ベネズエラ、韓国と、国籍や年齢、背景もばらばらな5組のハーフたちの本音に、自身もハーフである女性監督2人が迫ります。本展では、上映後に出演者によるアフタートークが開催されます。
ぜんぶ、フィデルのせい(フランス・イタリア/2006年)
1970年代のパリ。共産主義に目覚めた両親のせいで、上流階級の暮らしに別れを告げなくてはならなくなった9歳の少女の心の機微を描いた作品。題名の「フィデル」は、キューバ革命で社会主義政権を成立させたキューバ国家元首のフィデル・カストロのことです。
未来を写した子どもたち(アメリカ/2004年)
インド・カルカッタの売春街で生きるこどもたちを追ったドキュメンタリー。取材に訪れたカメラマンが、売春街のこどもたちにチャンスを与えようと写真を教え、彼らが撮った写真で写真展を開こうとするが...急速に発展するインドの一面が見られる映画です。
こどもの時間(日本/2001年)
埼玉県桶川市にある、いなほ保育園のこどもたちを5年間追い続けたドキュメンタリー。たき火で魚を焼いたり、木のプールで一日中泳いだり。自然の中を駆け回り、生きるのに必要なことを体得していく、今の都会ではなかなかお目にかかれないこどもたちに会える映画です。
はちみつ色のユン(フランス・ベルギー/2012年)
朝鮮戦争後、国際養子としてベルギーの一家に迎えられたユンは、祖国を忘れ、肌の色の違う家族と幸せに暮らし始めます。そんな彼の家族に、もう一人韓国からの養子が来ることになり、彼は自分のアイデンティティーを探し始めます。本作の監督ユン自身の半生を描き、知られざる韓国国際養子の歴史にも光を当てた作品です。
以上の映画上映のほかにも、移民や国際養子縁組、在日外国人、少数民族など、こどもを通して見えてくる社会のさまざまな事象についてのレクチャーやトークセッションが予定されています。また、こどもたちの言葉で作品を解説する「子どもキャプション・ワークショップ」、こどものための作品鑑賞ツール「キッズ・ワークシート」、100冊以上の絵本や児童書を集めた「えほんとしょかん」が開催・設置され、本展の主役であるこどもも楽しめる空間が用意される予定です。
こどもの日を過ぎてからの開催となりますが、久しぶりにこどもの視点に返りたい人、こどもをとりまく世界の現状を知りたい人、こどもと一緒にアートを楽しみたい人におすすめです。
※映画鑑賞は事前の申し込みが必要です。詳細はこちら。
関連するURL/媒体
http://www.mori.art.museum/contents/go_betweens/index.html