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2013.05.22 瀬戸 義章
オーストラリアから北へ約600キロ。小スンダ列島のひとつ、ティモール島の東半分を領土とする国が、東ティモール共和国です。人口は約117万人と、とても小さな国です。
2002年、独立を果たした東ティモールの祝賀会場を、一人の日本人女性が訪れました。当時23歳だった広田奈津子さんの心を捉えたのは、ステージからではなく、会場の片隅から聞こえてきた歌でした。
映画「カンタ! ティモール」の製作は、その歌をきっかけに始まります。子どもたちに囲まれ、ギターを響かせて笑い合いながら青年が唄うその歌は、実は、長い独立運動の中で、ひそやかに唄われていたものでした。
1975年、東ティモールはポルトガルからの独立を宣言しますが、9日後に隣国インドネシアからの軍事侵攻を受けます。最初の10年間で、人口の3分の1である20万人が殺されたと言われています。日本から多額の開発援助を受けたインドネシアの占領下で、いったい、何が行われたのか。広田さんは、ゲリラ兵、母親たち、シャーマン、そして初代大統領へのインタビューを通じて、それを明らかにしていきます。
劇中に登場する、紛争をテーマに世界中を歩く報道写真家、南風島渉さんは言います。
「東ティモールのゲリラは、私が見た中でもっとも貧弱な装備をしていました。なにしろ、ビーチサンダルを履いて、弾薬はインドネシア軍の基地の周りで拾い集めたもの、という有様なのですから」
世界にはロケット砲で武装したゲリラもいます。しかし、実際に独立を果たしたのは、サンダルを履いた東ティモールの人々でした。いったい、どんな選択をし続けて、彼らはそれを成し遂げたのでしょうか? その方法が想像できますか?
その答えの一つが「カンタ! ティモール」で描かれています。
気になる方は、ぜひ映画をご覧ください。日本全国で、ほぼ毎日、自主上映会が行われています。スケジュールはこちらをご覧ください。
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