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Art & Design

「助けて!」と叫ぶことのできない花のために

2014.06.30 岩井 光子

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自ら声を上げることのできない花を「SHY FLOWER」と表現  Photographer Misaki Nasu


だれからも愛される花。お祝いや感謝の席に華やかなお花は欠かせませんが、宴を彩ってくれた花がその後どうなるか、考えたことはありますか? 結婚式の披露宴などでは出席者に配られることもありますが、テレビ番組の収録現場やパーティー会場、結婚式の二次会会場などではたった数時間で役目を終え、生ゴミとして廃棄されるケースが少なくないそうです。花屋さんでもおおよそ1週間で店頭の花は入れ替わり、売れ残りは廃棄されると言います。

コピーライターの古橋あや香さんは、仕事でフラワー教室にかかわった経験から廃棄花の存在を知りました。捨てられる花の多さにショックを受け、廃棄花を再利用するアイデアを考えていたところ、独立してドライフラワーとプリザーブドフラワーを扱うブランドを始めた大学時代の友人と意気投合。2012年に2人で「SHY FLOWER PROJECT」を立ち上げました。

プロジェクトは廃棄花を回収してドライにし、コサージュやヘアアクセサリーなど小物作りに使ったり、イベントの装飾花に活用したりして、見過ごされている廃棄花の存在を広く知ってもらおうというもの。ドライフラワーはもろさもありますが、周りを丈夫で長持ちするプリザーブドフラワーで補強してコサージュなどに仕立てるので耐久性も十分です。何よりもドライの質感とプリザーブドの鮮やかな色合いが相性抜群で、作品は一度不要になった花で作ったとは思えないほどアーティスティックな魅力にあふれています。売り上げは新たな回収の費用や作品作りの経費などに当てているそうです。

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アンティークな質感のコサージュ。つけるだけで気分も高揚しそう  Photographer Misaki Nasu


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こちらは花を紙にすき込んだ新作のピアス  Photographer Misaki Nasu ©fib

プロジェクトを開始して2年。フラワーデザイナーは今ではプロボノで参加するYoko Anicka Miyazakiさんにバトンタッチ。プロジェクトの運営全般は古橋さんが一人で担当していますが、Facebookの呼びかけで集まった約30人のボランティアスタッフが週一度、趣旨に賛同するレストランや音楽スタジオに花を回収に出かけるなどして、活動をバックアップしています。「(捨てることが)いつも辛かった」、そんな心情を打ち明けてくれた花屋さんも、ボランティアスタッフの中にはいるそうです。

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回収した花に囲まれて(左がフラワーデザイナーのYoko Anicka Miyazakiさん)


6月は湿度が高く花を乾かすのにとても時間がかかるシーズンですが、結婚式が多く、花の回収量が1年で最も多い月。4月にプロジェクトのHPサイトを立ち上げてからは「コラボレーションの問い合わせがすごく増えました」と古橋さん。5月は世田谷のものづくり学校で行われたエシカルファッションショー、ルミネ有楽町店のフラワーイベントでのコラボなどが好評でした。

古橋さんは「廃棄花の存在を広く知ってもらうことが活動目的なので、今後もコラボに力を入れたい」と話します。HPサイトには「100のビジョン」と題したこれからやってみたいコラボの構想も。「ビストロスマップの花を回収したい」「蜷川実花さんとコラボしたい」「ほぼ日手帳の柄になりたい」など、いずれも実現したら盛り上がりそうな妄想(?)の数々。取材中、3月に終了した「笑っていいとも!の花は一度回収してみたかった」、そんな楽しい話も飛び出しました。

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Photographer Misaki Nasu


人間の都合で捨てられていく花をもう一度輝かせる―。古橋さんの活動への共感はどんどん広がっていきそうです。



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