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メガネ型端末も導入 障害のある人も楽しめる「バリアフリー能」

2015.03.17 平澤 直子

「障害のある人も障害のない人も一緒に」「交ざり合う社会」など、バリアフリーな社会が叫ばれて久しい日本。特に東京では、公的機関が主催する講演会などでは車椅子席が用意され、演者の発言はリアルタイムにスクリーンに映し出されるなど、少しずつではありますが、障害を持つ人への配慮が形として見えるようになってきました。とはいえ、それはあくまで公的なイベントが主で、エンターテイメントの世界ではまだサポートが少ないのが現状です。

そんな中、数あるエンターテイメントの中でも歴史の深い「能」「狂言」の世界で、15年前 から「バリアフリー」を実践している人たちがいます。神奈川県の横浜能楽堂では毎年春に「バリアフリー能」を開催、障害のある人からの意見を取り入れ、そのサポート体制は徐々に進化してきています。

横浜能楽堂ではまず、能を見に行くことに対するバリアをなくすため、点字チラシを用意、また、パンフレットの事前メール送付サービスや、台本の事前郵送サービス(ともに希望者のみ)を行っています。こうすることで、事前に自身で内容を確認したり、誰かに内容を読んでもらったりできるため、利用者には好評のようです。

当日は介助者が1人まで無料となる(チケット申込み時に申告が必要)うえ、途中入退場が可能なので、安心して来場することができます。来場後は、点字パンフレットが配布され、副音声を聞くための機器や能舞台の触図(しょくず=視覚障害者が触って空間認識を行う図のこと)の貸し出しも行われるなど、舞台を楽しむためのサポートも数種類用意されています。そして幕が開くとまず解説が始まりますが、これには手話通訳およびスクリーンへの字幕投影が伴います。残念ながら本番中はどちらも中止されるため、副音声を聞いたり台本を読んだりすることで舞台をより楽しむことが基本となりますが、聴覚障害の方の「膝の上に置いた台本と舞台を交互に見るのは大変」という言葉を受け、2013年より、本番中もパソコンやiPadに字幕が配信されるサービス(座席数限定)が用意されました。さらに今年はiPad、iPodtouchに加え、メガネ型ウェアラブル端末も導入されます。この端末をかけることで字幕が目線の高さに表示されるため、舞台を見ながら字幕を追うことができます。

こうした多種多様なサポートで鑑賞を可能とするだけでなく、さらに踏み込んで能を楽しんでもらおうと、横浜能楽堂では当日、触れることができる能面を展示したり、事前に施設見学会も行ったりもしています。施設見学会(聴覚障害者および視覚障害者対象)では、140年の歴史を誇る本舞台に上がり、ヒノキの香りを感じたり、足踏みをしてその振動を感じたり、また、楽器に触れたりすることもできます。

今年の施設見学会は終了しましたが、公演は3月21日でこれからです。演目は狂言「文荷」(ふみにない)と能「巻絹」(まきぎぬ)。ぜひお出かけください。



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神奈川、日本 (日本

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