Art & Design
2015.07.09 宮原 桃子
(C)Reduce.Reuse.Grow
使い捨てカップでコーヒーを飲む人びとの姿は、世界中でよく見かける光景です。米国環境保護庁によると、アメリカでは年間250億個もの発泡スチロールのカップが捨てられているということです。ゴミを減らすために一番良いのは、マイカップを持参して入れてもらうことですが、すべての人がマイカップを持ち歩くのもまた難しいのが現実です。
そこでカリフォルニア・ポリテック州立大学の学生によるベンチャー企業「Reduce. Reuse. Grow(リデュース.リユース.グロウ)」は、ゴミを減らすとともに緑も増やすという発想で、生分解可能で種まで植えられるコーヒーカップの開発プロジェクトを立ち上げました。今年3月にはクラウドファンディングで約2万1000ドル(約260万円)を集め、現在製品化に向けて準備が進んでいます。同社は、地域のリサイクル施設からこれ以上リサイクルできない繊維を回収し、そこに地域の在来種の種を埋め込んで、紙製のコーヒーカップを製造します。消費者は、コーヒーを飲んだ後にカップを解体し、5分間水に浸してから土に埋めると、約180日間で土に還ります。同社によると、繊維に埋め込まれた種が木に成長すると、年間1トンの二酸化炭素を吸収するそうです。このコーヒーカップ専用のゴミ箱も設置される予定で、こちらは会社側で回収して土に埋めるということです。
Reduce. Reuse. Grow.- Plantable Coffee Cup Kickstarter from Alex Henige on Vimeo.
クラウドファンディング用の同社紹介動画これまでも世の中には、種が埋め込まれた紙「シードペーパー」で作られたハガキやカード、封筒などの商品もありました。今回のようにこの技術を日常で多く消費されるものに活用していけば、ゴミ削減や緑化に大きなインパクトをもたらすことでしょう。同社の名前に象徴されるように、リサイクルの前に、まず「ゴミ・使い捨てを減らす(リデュース)」、「再利用する(リユース)」ことが大切です。こうした一人ひとりの地道な努力に、さらに「育てる(グロウ)」が加わると、ポジティブな効果をもたらすワクワク感が生まれます。土に還って花を咲かせるコーヒーカップは、こうしたワクワク感をもたらしながら、意識の高い人からそうでない人まで、多くの人を巻き込んでいくのではないでしょうか。
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