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「町のカケラ」に子どもたちの笑顔を込めて-ワタノハスマイル

2011.10.20 瀬戸 義章

使い込まれたサッカーボールが足もとに転がってきました。パスを返すと、大きな「ありがとうございます!」という声とともに、また校庭でボール蹴りがはじまります。そばでは小さな女の子がシャボン玉を吹いていて、きらきらとひかりながら空へと上っていくのが見えました。

ここは石巻市の避難所である渡波(わたのは)小学校。僕が訪れた6月にはまだ腐敗した水産加工品から生じたハエが飛び交い、堆積したヘドロが乾燥して粉塵(ふんじん)がまっていましたが、そんなことはすっと忘れて、また元気をもらえる光景でした。

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作品がほほえみかけてくる photo by tomo inukai


渡波の子どもたちの笑顔が込められた展示会が「ワタノハスマイル」です。会場となった東京・西麻布のギャラリーには、金属バケツにカラーコーンを被せてとんがり帽子にしたり、扇風機のカバーにキャップで目鼻をつけたり、どれも愛嬌のあるキャラクターたち。すべて、校庭に押し寄せたガレキを素材にして作られています。おっと、彼らはガレキとは呼びません。「町のカケラ」。そう呼びます。ゴミとして処理される「町のカケラ」たちが、子どもたちの手によって復興のシンボルに生まれ変わりました。

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校庭への津波被害 photo by tomo inukai


渡波小学校は10月11日までの、じつに214日間、避難所として機能していました。ピーク時には1,600人が身を寄せていたこともあります。震災当日は、1メートルの津波に襲われ、家屋やクルマが校庭に積み重なりました。作品の素材は、すべてその校庭でひろったものです。

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自分の世界に没頭して作り上げる photo by tomo inukai


山形県在住のアーティスト、犬飼ともさんをはじめとするNPOスマイルホープが、小学校に滞在し、ボランティア活動をはじめたのは3月下旬のこと。当時は生きていくのに精一杯で、子どもたちが遊ぶスペースはもちろん、おもちゃも絵本もほとんどありませんでした。そこで全国から支援を募るとともに、教室の一つを借りて、子どもたちが遊べるプレイルームを作りました。町のカケラを使って作品をつくるワークショップを開催したのは、4月頭のことです。作っているようすをみて、ぼくもわたしもと参加者が増えていきました。30人の子どもたちが2日間、もう夢中になって、100体ものオブジェを作り上げました。

こうした子どもたちの「作品」は、東京・京都・大阪など、全国10カ所以上で展示されています。渡波小学校に訪れて、このあたたかさに触れたボランティアが、地元に帰って、ワタノハスマイル展を招待していったのです。

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笑顔とともに photo by tomo inukai


「子どもたちも喜んでいるんです。それは、自分の作品を大勢の人に見てもらえてうれしい、ということだけではありません。いろいろな支援を受けてばかりだったけれど、『自分たちにもなにかできるんだ』という喜びを感じているんです」犬飼さんはそう語ります。

8月末に仮設校舎での授業がはじまった渡波小学校では、「日常」を少しずつ取り戻そうとしています。ふつうの学校に戻ることが、彼らの願いです。運動会や遠足などの行事も再開しましたが、鼓笛隊の楽器、といった道具類はまだ不足しているそうです。

「ワタノハスマイル」の展示会は、下記日程で開催されます。会場で寄付も受け付けています。みなさんもぜひ足を運んでみてください。

【都内での展示スケジュール】
ギャラリー le bain(ル・ベイン) 10月21日まで
池袋 東武百貨店 11月10日から30日まで



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東京、日本 (日本

瀬戸 義章