Think the Earth

『Waterlife』Tara Books Pvt. Ltd

世界最大の子どもの本の見本市「ボローニャ国際児童図書展」がイタリア・ボローニャで3月19日から22日まで開催されました。同展が毎年開催する絵本コンクール「ボローニャ・ラガッツィ賞」は、世界的に有名ですが、今年のニューホライズン部門（アジア・アフリカ、ラテンアメリカ、アラブの出版作品を対象とする）で優秀賞を獲得したのが、インドの出版社タラブックスが制作した『Waterlife』。水にすむ様々な生き物を、インド北東部ビハール州の伝統的なミティラー画で描いた絵本です。

繊細で独特のタッチの素晴らしい絵はさることながら、さらに注目すべきは、この絵本が一冊一冊職人の手によって作られていることです。布くず、紙くず、藁（わら）などを原料とした手すき紙に、職人がスクリーンプリントを施し、製版・製本など全ての作業を手で行っています。作業所は、フェアな賃金や労働者間のヒエラルキーのない対等な関係、労働者に対する様々な支援（住居・食事の提供、技術教育、融資など）といった独自のフェアトレード基準で運営されており、職人たちは共同生活を営みながら働いています。

タラブックスは、1994年にインド南部のチェンナイで創立された出版社。絵本やアート、ビジュアルブックを主に出版し、インド各地域に根差す伝統芸術で描かれた本を多く扱います。手作りによる本は、同社が出版する書籍の4割を占め、これまでに約20万冊が出版されました。すでに2008年、2010年にもニューホライズン部門で最優秀賞を受賞しており、世界的に評価を受けています。

手作りされた本は、温かみがあり、開くとインドの香りが感じられる特別な一冊。美しい模様で描かれた生き物たちは、ユーモラスな表情で大人も子どもも楽しませてくれます。この絵本を通して、子どもたちは多様な文化に触れることができ、またモノができあがる過程やフェアトレードについて考えるきっかけになるのではないでしょうか。