Biodiversity
2012.10.05 岩井 光子
ジャコに隠れたチリモン、あなたはいくつ見つけられる? 写真提供:きしわだ自然資料館
子どものころ、おかずのチリメンジャコに混じった小さなカニやタコを見つけてうれしくなった記憶はありませんか?
そんな食事時のささやかなワクワクをゲーム感覚の教材に発展させたのが大阪府岸和田市のきしわだ自然資料館ときしわだ自然友の会です。カタクチイワシなどの稚魚であるチリメンジャコに混じった動物プランクトンを人気キャラクターになぞらえてチリメンモンスター、略して「チリモン」と名付け、2004年、ピンセットやはしで見つけ出す子ども向けイベントを実施したところ、大評判となりました。
市販のチリメンジャコには混じりものが少なくなっていることから、同館が「教材」として取り寄せているのは、和歌山県の水産加工会社「カネ上」が販売するチリモン入りの特別商品。チリモンは体長1センチ以下の微小なものが多く、子どもたちは虫眼鏡なども使いつつ、注意深く目を凝らします。これまでに200種近くのチリモンが見つかっており、素人でも比較的判別がつきやすいタコやイカ、タツノオトシゴ、卵からふ化したばかりのカニやエビの幼生などから細長いタチウオ、カワハギやタイ、フグ、サバ、中にはコバンザメやマツカサウオといった非常にレアな掘り出しものまでありました。
全国的な人気を受けて2010年に同館と友の会が監修したのが『チリモン図鑑カード100』。主な100種の写真と特徴、レア度(見つかる頻度を1−5までスケール化したもの)などが書いてあり、カルタ遊びもできるよう楽しい読み札もついています。同館学芸員の平田慎一郎さんは、「カードを見てもらうとわかるのですが、イワガニの仲間、オキアミの仲間などと名前があいまいになっているものが多い」と指摘します。「海の生物は近縁種がたくさんあるので、成魚なら分かるものでも稚魚の段階での種の特定は専門家でも難しい」からだそうです。大阪湾周辺のシラス漁という極めて限られた海の世界であってもまだまだ未知な部分が多いことに、改めて日本の海の豊かさを実感させられます。
チリモン探しのイベントが始まって今年で8年目。新たな試みも進んでいます。2011年4月からはチリモンの見分け方や開催手順のノウハウを公開しようと、チリモン指導者を育成する研修会が始まりました。また今年12月には愛媛県や鹿児島県を始め、全国各地の博物館や水族館、小中学校、自然保護団体などチリモン探しを実施した主催者が一堂に集まって開催方法のアイデアを発表、意見交換する「チリモンまつり2012」を初開催する計画も進んでいるそうです。海の豊かさを遊びながら体感できるチリモン探し、今後の展開が楽しみです。
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