Biodiversity
2012.10.19 山田 由美
撮影:中村照男
鳥の中には、えさや繁殖などの事情に応じて定期的に地域を移動するものがいて、「渡り鳥」と呼ばれていますが、いつどのようなルートをたどっているのか、その進路を正確に把握するのは難しいことでした。しかし近年、鳥に負担のない送信機を装着して人工衛星からその場所を追跡する方法が確立し、鳥たちがダイナミックな旅を繰り広げていることがわかってきました。
その動きをリアルタイムで一般公開する取り組みが「ハチクマプロジェクト」です。日本で夏に繁殖をし、秋になると南下して越冬する「ハチクマ」というタカの一種に小型送信機をつけ、その位置をGoogleマップで誰もが見られるようにしています。9月に公開されて以来、ハチクマたちは繁殖地であった青森で確認されていましたが、9月後半には次々と南下を開始。そしてすでに東シナ海約700キロを超え、11月中下旬には目的地のインドネシアなどに到着すると予想されています。また、北上の際は違うルートを通ると言われており、それがわかるのも楽しみです。
プロジェクトを全体統括する樋口広芳・慶応大特任教授は「国内外の多くの人に見てもらうことによって、鳥の渡りや自然の仕組みについて理解を深めてもらいたい」と話し、「鳥の旅の途中には、渡来地の消失、悪天候、密猟、科学汚染などさまざまな苦難が待ち受けています。これからもハチクマの旅が安全であるよう願っています」と祈りながら日々追跡を続けています。
鳥たちは天気予報も知らず、地図もなく、自身の判断だけで経路や時期を選び、目的地に到着します。そしてハチタカはなんと翌年は同じ「巣」に戻ってくるのです。その能力にはただただ敬服するばかりです。
関連するURL/媒体