Biodiversity
2014.11.02 山田 由美
クラウドファンディングで「Warblr」改良のための資金協力を呼びかけるビデオ
ロンドン大学のクイーン・メアリーカレッジの助成金で「Warblr」という鳥の声が認識できるスマートフォン向けアプリが開発されています。今までも多くの人々が挑戦したり失敗したりしてきた鳥の声を聞いて種を特定させるという取り組み。ここに同大のダン・ストウェル博士が研究を進めてきた「機械学習」などの技術が投入され実現の可能性が見えてきました。使い方は簡単。アプリを声の方向にかざし録音します。それをサーバに送ると、マッチングさせて、該当する可能性の高い種の名前が確率と共にリスト表示されます。鳥の声を自動分類できれば、誰でも自分の居る場所にどんな鳥がいるのか知ることができます。
今のところイギリスでよく見かける88種類の鳥は対応できていますが、現在はプロトタイプ。鳥たちの歌声でにぎわう来年の春先まで改良を進め、アプリを公開する予定です。「特定の鳥を自動で認識するというのは驚くほど難しいのです。なぜなら鳥は、ひとつの種でも時間帯や年齢、繁殖期かどうかなどによって違う音を出すのです」とストウェル博士。BBCとの共同テストでも側で叫んでいた子どもの声の影響を受けて誤認識されてしまい、周囲のノイズ対応への難しさも浮き彫りになりました。
WIREDの取材にも「我々の機械学習の技術は、違った種がいる中で個々の鳥が認識できるようにしていかなければなりません。たくさん歌やさえずりのレパートリーがありますし、ある種は生涯に渡って歌を学習し続けます。また渡り鳥は越冬地から新しい歌声を持ち帰ってくることが知られているのです」と答えています。
Warblr共同設立者でCEOのフローレンス・ウィルキンソン氏はこれら課題を克服するためにもクラウドファンディングで12月2日まで資金を募っています。同氏は「私たちの目的は、技術を通して人々に自然を身近に感じてもらえるようにすること。外に出て身近な野鳥を知ってほしい。なぜなら、知ることでその鳥を次世代まで守りたくなるはずと信じているから」と語り、利用者が収集し使用許可を与えたデータは種の減少や移動パターンの監視などをする専門家たちに提供して保護に役立てる方針だそう。
彼らが危惧していることの一つは刻々と進む種の絶滅。彼らが一例に挙げたのがリョコウバト。50億羽いると言われながら100年前に絶滅したのは、人間が「肉が美味しい。金になる」と追いかけ密猟を続け、ついに最後の1羽まで撃ち落としたからです。こうした種は、いくらDNAを解析し復活させる研究が進んでも、この世にかえってくるものではありません。
学術的な挑戦でもあり、社会への挑戦でもある、期待されるアプリの開発です。
関連するURL/媒体
http://www.bbc.com/news/technology-29803779