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2013.03.13 瀬戸 義章
東ティモールのタイスマーケット photo by LoRoSHIP
東ティモールという国があります。インドネシアに約2万あるという島のひとつ、ティモール島の東半分を領土としています。インドネシアによる占領に激しく抵抗し、2002年に独立を果たしたばかりの国です。ここに住む人々の伝統的な織物である「タイス」を用いたエシカルビジネスを、NPO法人LoRoSHIPがはじめようとしています。
2012年の8月から9月にかけて、LoRoSHIPの代表である藤森幹さんは、1日5ドルの(ベッドが崩れている)宿に寝泊まりしながら、東ティモールの状況を見聞きしました。そして、この国がさまざまな問題を抱えていることに気づきました。
大きな問題のひとつは、仕事が無い、ということです。通りを歩いていると、平日の昼間でも、ぶらぶらしている人々があちこちで目に付きます。彼らに尋ねたところ「働く方法が無い」という答えが返ってきました。東ティモールは若い国です。国家としてだけでなく、中央年齢が22.8歳と、そこに住む人々も若々しい国です(中央年齢とは上の世代と下の世代の人口が同じになる年齢のこと。ちなみに日本は45.4歳です)。しかし、子どもたちが成長しても、いまの東ティモールには活躍できる仕事がありません。大学生の多くは「この国から出たい」と言っていたそうです。
一方で、伝統が途絶えようとしています。カラフルな模様が美しい、東ティモールの織物であるタイスをつくることができるのは、いまや年をとった母親たちだけです。古くさく、手間がかかり、儲からないタイス作りに手を出そうとする若者がほとんどいないのです。
仕事と文化。この2つの問題を解決するために、LoRoSHIPが考えたのは、布としてのタイスを最大限に活用する、新しいビジネスでした。東ティモールで製造したタイスを日本に運び、デザインを加えて販売するのです。日本に通用する商品力を持てば、世界の市場で売ることが可能になります。既に、各方面の団体とパートナーシップを結びました。日本で、世界で、そしてもちろん東ティモールでタイス製品が人気になれば、それだけ地方の産業が活性化するでしょう。なにしろ、「おみやげが無い」というのも、この国の悩みのひとつなのですから。
藤森さんはこう話します。「日本にいるとぜんぜん意識しませんが、東ティモールはまさに、国家というものをつくっている段階です。それだけに、伝統文化を失ってしまうことは、より深刻だと思っています。だからぼくは、今年の夏から現地に滞在して、このプロジェクトを成功させるために全力を尽くします!」
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