NTT DATAThink Daily

  • 地球リポート
  • 地球ニュース
  • 緊急支援
  • 告知板
  • Think Dailyとは

地球ニュース

RSSrss

Climate Change

温暖化の指標となる皇帝ペンギンを探せ! 

2013.01.17 ささ とも

Emperor penguin colony, Antarctica:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by StormPetrel1

1月10日付の英ガーディアン紙によると、南極東部のプリンセス・ラグンヒルド・コーストでベルギーのプリンセス・エリザベス基地の3人の専門家が9000羽にのぼる皇帝ペンギンのコロニーを新たに発見しました。この皇帝ペンギンのコロニーは、2009年に英国南極観測局(BAS)などが衛星画像で確認していましたが、今回初めて実際に人の目で確かめることができました。

南極大陸では、トウゾクカモメなどの海鳥の多くが夏に繁殖期を過ごし、冬には暖かい土地に移動します。厳しい南極の冬を越す数少ない生きもののひとつが皇帝ペンギンです。冬に入る前の5月から6月初めにメスが産んだ卵をオスが受け取り、約2カ月間その場に立ち続け卵を温めます。メスが餌を運んで戻るころにヒナが産まれ、海氷がとけて食物が豊富にとれる1月か2月に成長したヒナが海に出られます。

皇帝ペンギンのコロニーは海氷の上にあります。海氷の融点はマイナス1.9度(※)で、冬の平均気温がマイナス5度~マイナス20度以下となる大陸沿岸よりも暖かいことが理由のひとつです。皇帝ペンギンの個体数が注目されているのは、個体数の変化の原因として、温暖化による海氷の融解が考えられるためです。海氷の面積が減少すれば、その上でコロニーをつくる皇帝ペンギンの数が減ることになります。

極寒の環境の中で人による調査が困難な南極では、衛星画像の分析が鍵となります。2012年4月13日に米科学誌「PLoS ONE」(電子版)に発表された調査によると、南極全体に生息する皇帝ペンギンの個体数は、成体で約60万羽と推定され、1992年の推定約27万~35万羽のおよそ2倍になるとわかりました。

最新技術と極地探検のおかげで、皇帝ペンギンの数はこれまで推定された数より多くなりましたが、個体数自体が増加しているということではありません。英科学誌ネイチャー・ジオサイエンスは2012年12月23日付の電子版で、西南極の年間気温は1958年から2010年の間に約2.4度上昇しており、地球上で最も温暖化が進んでいる地域のひとつである、とする研究を発表しました。夏の気温が上昇し続ければ、西南極氷床の表面の融解はより頻繁に起き、広範囲に及ぶことになりうるといいます。

極限の環境で密かに王国を築いてきた皇帝ペンギン。人為的温暖化は、人を拒絶する極地にまでも影響を及ぼしています。彼らの王国をそっと見守りつつ、温暖化を止めなければなりません。

※ 参考図書 『極限環境の生命』D.A.ワートン著 堀越弘殻・浜本哲朗訳 シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社



関連するURL/媒体

Bookmark and Share

Thinkテーマ別に読む

Biodiversity, Climate Change

このニュースの地域

南極 (その他

ささ とも