Climate Change
2014.02.04 山田 由美
Magellanic Penguin: Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Don Faulkner
アルゼンチンで多くのペンギンのヒナが気候変動の影響を受けて命を落としているという研究結果が1月29日、米オンライン科学誌Plos Oneに発表されました。アルゼンチン南部のプンタトンボ半島にある世界最大のマゼランペンギンのコロニーで27年間に渡って行われた調査結果が公表されるのは初めてのことで、「気候変動が(ペンギンの)ヒナに影響を及ぼしていることを示す初の長期研究だ」と論文主筆のワシントン大学のディー・ボースマ教授は言います。
ペンギンの多くはこの研究対象領域のように海岸地域の乾燥地帯で繁殖します。歴史的に強い降雨はそう頻繁にはなく、ペンギンたちは暑さに対しては掘った穴や岩の割れ目のような日陰でしのぐなどして適応してきました。ところが、1960年から2000年にかけて降雨は増え嵐もひどくなり、気温の振れ幅が増大。降雨が増えたのはエルニーニョなどの現象により温かく湿った空気の流れ込みが増加したことが起因していると考えられています。しかしこの20世紀の激しい気候の変化に、海鳥たちの生態は適応が追いついていません。また、この影響で最も命の危険にさらされてしまうのがヒナたちなのです。
ヒナが育っていけるか否かは食べ物を得られるかどうかに大きく左右されていて、プンタトンボにおいても餓死が死因の40%と最も多いのですが、異常気象だった2年は気候変動による死因が43%、50%と突出しました。
親が濡れないよう保護するには育ち過ぎているけれども、羽毛がまだ防水仕様にはなっていない時期のヒナが最も危険で、嵐による死亡の最多も生後9-23日のヒナでした。防水ができないうちに羽毛や皮膚がひどく濡れると体温が奪われ、ほとんどのヒナは死んでしまうのです。また、ヒナは水に入ってほてった体を冷やすことができないので、極端な暑さも致命的です。
2076年-2100年は、1951年-1976年に比べて南半球の夏の降雨が40-70%増加すると予測する気候モデルもあり、共同執筆者のジンジャー・レブストック教授は「異常気象でヒナが絶滅してしまう年が来るかもしれない」と述べています。
さらに27年間の調査で、ペンギンの親が繁殖地を訪れる時期が捕食する魚の動きに合わせてどんどん遅くなっているという事実も判明しました。このため、嵐がくる時期がヒナの羽毛が防水仕様になっていない危険期に当たる場合が増えているのです。
PlosOneに投稿された別の論文では、巨大氷山の出現や分離など、海氷の変化が南極海に棲むアデリーペンギンの繁殖や捕食に影響を及ぼしていると指摘しています。
雨風が吹き荒れても、衣服や家に守られる私たちと違って、体一つで寒さ暑さに立ち向かわなければならない動物たちの生き様はまさに過酷。それに追い打ちをかけている人間はもっと謙虚に温暖化に向き合わなければならないことを示す研究結果であると思います。
関連するURL/媒体
http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-25950906