Climate Change
2014.12.03 山田 由美
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今年8月、74人もの犠牲者が出た広島県広島市北部の豪雨による土砂災害。11月20日に最後まで残っていた避難勧告がようやく解除されました。ここまでおよそ3カ月の間、多くの犠牲を教訓に、国や自治体、研究機関、住民はそれぞれに少しずつ変化をしてきました。
土砂災害から人命を守るために「土砂災害防止法」という法律があります。本法は1999年に広島市で31人が死亡した土砂災害をきっかけに作られました。都道府県が土壌などの基礎調査をして警戒区域や特別警戒区域を指定し、特別警戒区域では宅地造成が規制されます。しかし、不動産価格が下がるなどの住民の反対で指定が進まず、基礎調査すら完了していない場所が多く存在し、住民に土砂災害の危険性が十分に伝わっていないのが現状。実は広島の今回の被災地が土砂災害の危険性が高い地域であったにもかかわらず、警戒区域などに指定されず、宅地造成が進められていた点も後から浮き彫りになりました。
これらの問題点を是正するために改正土砂災害防止法が11月12日に参院本会議で可決・成立。国は都道府県に5年で基礎調査を終えるように求めており、完了すれば警戒区域は今年8月時点の約35万カ所から約65万カ所に増えると見込んでいます。早速各都道府県で土砂災害警戒情報の発表基準の見直しが進んでおり、調査早期段階で公表したり、次々追加公表する自治体が相次いでいます。
また「初動対応をめぐる(広島)市の検証部会」で「避難勧告を待つのではなく、危ないと思ったら早期に自主避難をするべき」と声が出始めているのも住民意識の変化の現れです。
さらに災害発生予測を高める技術にも注目が集まっています。独立行政法人・情報通信研究機構と大阪大学の研究チームはキャンパス内に気象レーダーを設置し、半径60キロの雨風の情報を30秒ごとに更新し公表。今後は局地的大雨の予兆をとらえる予定です。宇宙開発機構(JAXA)は9月より、GPM主衛星が観測する3D降水データの一般提供を開始。この衛星は「空飛ぶ雨量計」と呼ばれており降水分布を正確に3次元でとらえ、予報精度向上や台風などの進路予測に活用されます。
しかしこれだけ対策を進めても、日本は「洪水・土砂災害・地震・液状化・津波という5つの災害について、発生リスクが高いエリアに人口の7割が居住している」との調査結果が発表され懸念は尽きません。国土交通省は2050年、現在の居住地域の6割以上の地点で人口が半分以下に減少する地域消滅の危機などの課題とも絡め、災害対策の点でもコンパクト化(集約化)を推奨し始めました。宅地を無尽蔵に開発してきた従来の形を止め、集約したコンパクトシティ同士をつなぎ、対流させることで孤立化させないという新しい国土構造を検討中です。
法律も、情報も、技術も、意識も、そして国土の行く末も変わるきっかけになった広島豪雨でした。土砂災害危険箇所と警戒区域の情報はこちらで公開されています。まずは自身のお住まいの地域情報を調べてみてはいかがでしょうか。
関連するURL/媒体
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO79590420S4A111C1CR0000/