Climate Change
2014.12.26 山田 由美
Golden-winged Warbler:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Mark Peck
カリフォルニア大学バークレー校の研究チームが「キンバネアメリカムシクイという小鳥を追跡調査したところ、2014年4月に起きた竜巻の前日に営巣地から避難行動をしていたことが判明した」という研究結果を発表しました。
この竜巻はアメリカ南部と中部を襲った巨大な嵐によるもので、少なくとも84の竜巻が発生し、犠牲者は35人、経済損失も10億ドル(約1200億円)以上と壊滅的な被害を引き起こしました。小鳥たちは事前にこの危険を察知し回避行動をとったというのです。
研究者らが研究対象にしたのはキンバネアメリカムシクイという文字通り金色の羽を持ち、美しい鳴き声を持つ小鳥でした。とても小さく体重はわずか9グラムほど。今回このような小鳥に装置をつけられたのは、場所を測定する「ジオロケーター」が約0.5グラムにまで軽量化されたからでした。太陽の光の強弱(照度)を測定することで位置を特定する仕組みで、GPSを利用する衛星追跡より精度は落ちますが大まかな行動は把握できるのです。
2013年5月、同研究チームはテネシー州北東部にてテネシー大、ミネソタ大と共同で20羽に装置を装着。小鳥たちはその地で夏を過ごし、繁殖期を過ごしていることが確認されました。論文第一著者である生態学者ヘンリー・ストレービー氏らは南のコロンビアで越冬後、翌年も夏を過ごすために戻って来た10羽を見つけ同州で観察を続けていましたが、そこへ嵐の予報が入ったのです。
同氏らはワッフルハウス(※)と呼ばれる飲食店に避難をしましたが外はひどい嵐。その後なんとか再会できた5羽の小鳥を捕獲しジオロケーターを外したところ、小鳥たちが嵐の前後で約1500キロも移動していたという驚きの事実が発見されたのです。
※自家発電、非常食、氷などを準備しハリケーンに備えるなどしてFEMA(米連邦緊急事態管理庁)から災害対策優良会社として認められている米国のチェーンレストラン。
詳細を調べると、5羽は嵐の1日か2日前に移動を開始。嵐の進路のやや南を逃げ、その後巣にまっすぐ帰ってきていることが判明しました。出発時点では天候はいつもと変わらず、嵐の位置はまだ数百マイル(約320キロ)も離れていたというのです。
推測できるのは、小鳥たちは嵐が発する轟音を感知しているということ。これは人が聞き取れるレベルよりもずっと低い波長の音で、数千キロ離れていても届き、それを警告として察知している可能性があるのです。嵐の前はいつもより鳥の数が少なくなるなどの観察結果もあり、この能力を持つのはキンバネアメリカムシクイだけではないであろうと推察されています。
鳥が定期の渡りルート上で危険を回避することは知られていましたが、渡りが終わってからも、荒天を避けるために繁殖用に作った縄張りを離れることがあると判明したのは今回の研究が初めて。小さな体が持つ高度な知力と体力には感服せずにいられません。
関連するURL/媒体
http://www.bbc.com/news/science-environment-30531060