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「ゴミタビ」を通じて見えたものづくりの可能性

2012.05.09 岩井 光子

ズオンオ村の大通り。道には圧縮された段ボールのブロックが積まれている
(c)Yoshiaki Seto

引っ越しや買い替えに伴い、不用な家具や家電を粗大ゴミとして捨てる私たち。捨てた方はじきに忘れてしまうその「ゴミ」を、物流会社がコンテナにすき間なくびっちり詰め込んでフィリピンやタイなど東南アジア諸国に輸出していることに興味を持った瀬戸義章さんは、2010年11月から3カ月間、その行方を追いかける旅(ゴミタビ)に出ます。

大学卒業後、物流会社の新規部門として04年に立ち上がったリユースビジネス「エコランド」のサイト構築や広報にかかわった瀬戸さんにとって、国内のリサイクル事情は見知った現場でしたが、海の向こう側で日本のゴミが上手に修理されて再び「商品」となり、活発な経済活動の原動力となっていることは驚くべき事実でした。

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日本の中古家具を修理して販売するタイのリサイクルショップ (c) Yoshiaki Seto


4月に刊行された瀬戸さんの著書『「ゴミ」を知れば経済がわかる』では、ゴミと経済との関係性がテーマになっています。ゴミを「仕入れ値ゼロの資源」ととらえる東南アジア各国では、使えるものを選り分けて活用し、収入につなげる仕組みを作り上げていました。例えば、ベトナムのズオンオでは村を挙げて段ボールをトイレットペーパーにリサイクルする事業に力を入れ、年間9億円を超える売り上げを出していました。また、タイ北部のピサヌロークでは市長のゴミゼロ宣言と共に100を超える分別方法を細かく住民に伝達、資源の売却で得た売り上げを地域の施設整備などに還元していました。

そうしたゴミの活用方法をどこか遠い国の話だと思っていた私たちも、東日本大震災を経てずいぶん意識が変わりました。瀬戸さん自身、帰国後は仙台で支援活動に携わりながら東北各県で取材を進め、次第に見えてきたのは旅した国々との思わぬつながりだったと言います。がれきの山に頭を悩ませる東北各県は東南アジア諸国で見た光景と重なりましたし、宮城県南三陸町や石巻市の避難所で見かけたのは東ティモールで見慣れたソーラーランタンでした。現地の最貧困層の間で使われていたランタンが東北にも届けられていたのです。

途上国の日常と震災でインフラが断絶した私たちの非日常が重なるとしたら、そこに巨大なものづくりの市場が生まれるのではないか、と瀬戸さんは指摘します。革新的な技術ばかりでなく、地域にもともとある資源や知恵、また、段ボールや空き缶など私たちが普段何も考えずに捨ててしまっているものをちょっと工夫することで実はいくつもの不便を解決できるし、緊急時をしのぐことができる。

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トウモロコシの芯(しん)とキャッサバで作る練炭 (c)Yoshiaki Seto


例えば生ゴミで発電もできるし、堆肥も炭も作れるなどといった新しい発想が、今後世界70億人のニーズにこたえる画期的でローコストなモノづくりの可能性を切り開くのでは、と瀬戸さんは大きな関心を持って見守っています。瀬戸さんのゴミタビを通じ、私たちが日ごろ「いらない」と判断する根拠や思い込みについて、改めて考えさせられます。



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