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「虐げられた女の子たちの物語を伝えたい」角田光代さんが翻訳本

2013.06.17 岩井 光子

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ドミニカで13歳の貧しい少女が幼い恋の末、不意に妊娠、子どもを産む。まだあどけない少女が早すぎる出産を迎えることで、少女は満足に教育も受けぬまま慣れない子育てに追われることになり、日々の生活は一層困窮していきます。

女の子だから学校には行けず、働くよう強要される。女の子だから暴力を受ける、レイプされる。女の子だから幼いうちに死の危険も伴う性器除去の因習に従わなければならないー。国際NGOのプランUKが2010年に出版した本『Because I am a Girl』には、「女の子だから」を理由に、そうした辛い現実に直面しているシエラレオネやドミニカ、ブラジル、カンボジアなど各国の少女たちが7つのストーリーの中に登場します。貧しさの中で、体を売るしか生活する術がないという考えに行き着いてしまう女の子もいて、本当にやるせない思いで胸がいっぱいになります。

この本を企画したプラン・UK事務局長のマリー・スタントンさんは、どうしたら少女たちの周りで日常的に起きている暴力や人権侵害の問題を多くの人に知ってもらえるかと考え、出版を思いついたと言います。米の大手出版社ランダムハウスの協力を得て『トレインスポッティング』の原作者アーヴィン・ウェルシュ始め、著名な小説家や映画監督、ジャーナリストら7人に少女たちの現状を伝える物語の執筆を依頼。こうしてNGO職員など支援者によるリポートとはまったく視点の異なる現地報告が完成したのです。

ウガンダで取材をしながら、レイプをされる少女側に非があるとしている現地の教育現場を目の当たりにし、怒りのあまり号泣してしまったマリー・フィリップスは、ノンフィクションで自らの動揺を赤裸々につづります。アーヴィン・ウェルシュは、ドミニカの貧しい田舎町を抜け出してアメリカの大学に進学した姉と、13歳で子を産んだ妹との互いの心の亀裂と和解をドラマティックに描き出します。売れっ子の作家たちがすさまじい共感力を持って描く物語からは、遠い国の少女たちの迷いや悔しさが身に迫るように伝わってくるのです。

スタントンさんは以前ジャーナリストと一緒に深刻な飢饉(ききん)に襲われたスーダンの奥地を旅しリポートを書いてもらった際、その物語が圧倒的な力を持って政府をも動かしたことがあったと語っています。少女たちの現実が作家たちの手によって優れた物語になることで、読者の心を動かし、ひいては世界を動かす力が生まれてくるのではないか。Because I am a Girlキャンペーンを各国支部合同で進めるプランはこの企画にそんな思いを寄せています。

日本語の翻訳は作家の角田光代さんが全編を担当。昨年11月に英治出版より発売されました。プラン・ジャパンの依頼でアフリカ・マリやインド南部を訪れたことのある角田さんは、女性性器切除の因習や人身売買、売春などの問題が深刻な地域を実際に視察した経験から、今回この翻訳依頼を「引き受けないわけにはいかなかった」と語っています。プランとかかわることがなければ、こうした問題に同性としてあえて首を突っ込みたくないという拒否反応は起きただろうが、少女たちの現状を知ってしまったからには「女の子たちの声を、私は私たちの言葉で、届けなくてはならなかった」と。



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