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2017.03.14 平澤 直子
Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Justin Kerr Sheckler
国民の3分の1が貧困ライン以下で暮らすコロンビア。その首都ボゴタの南、いわゆる貧困地域で暮らす子どもたちにとって、本はめったに手にすることができない高級品です。
そんな貧困地域でひとり、捨てられた本を拾い、子どもたちに提供している人がいます。ごみ収集人のJosé Alberto Gutiérrezさんです。
彼は20年前のある日、ボゴタの富裕層の住む地域で、ごみとして捨てられていた本を見つけます。それは、トルストイの「アンナ・カレーニナ」。あの有名な古典作品でした。
偶然拾ったこの本は、彼の情熱に火を付けます。それから20年、その火は消えることを知らず、彼は毎日50〜60冊の本を自宅に持ち帰り続けます。
自宅のすべての部屋が本で埋め尽くされるほどになった15年前、彼は自宅の一階を開放し、コミュニティ図書館『言葉の力(Strength of Words)』を始めました。その蔵書は古典と呼ばれる児童文学から科学の本まで、2万冊以上にのぼります。
ボゴタは大学や図書館が多く、その文化的水準の高さから「南米のアテネ」と呼ばれるほどですが、ボゴタ市内に19ある公立図書館はどれも貧困地域からは遠いといいます。そのため、「こういうコミュニティ図書館は、全ての地域にあるべき」と2015年に語っていたGutiérrezさん。その言葉を現実のものとすべく、彼は今、コロンビアにある何百という辺境の町に本を送る活動もしています。
小学校も退学しなくてはならないほど貧しい生活の中で、毎晩本を読んでくれた彼の母のおかげで、彼は本が「救いになる」ことを覚えました。「そしてそれが今コロンビアに必要なもの」なのだという彼は、「本を持つ人と、何も持たない人との架け橋」として今日も活動を続けています。
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