Food
2012.10.31 岩井 光子
Organic produce, Campo dei Fiori, Rome:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Elizabeth Buie
イタリアでGruppo di acquisto solidale(GAS)と呼ばれる有機作物や環境負荷の少ない物品を共同購入する市民グループが増えています。地域の有機農家が作る旬の野菜や果物、卵、牛乳、チーズから生活用品までを家族や友人同士、地域住民による少人数の消費者グループがまとめて注文、購入するシステムで、1994年に北部のフィデンツァで始まり、全土に広がっています。
GASは地域の生産者と消費者をダイレクトにつなぐ仕組みです。通常ならスーパーなど中間流通業者が得ているマージンがかかりません。輸送コストや人件費、パッケージ代などもずいぶん抑えられます。消費者は鮮度の高いおいしい有機作物をよりリーズナブルに買うことができ、一方、規模の小さな有機農家はGASのメンバーに生産を支えてもらえます。何よりも地域の生産者と顔の見える関係を築くことで、消費者は価格の安さばかりを判断基準にせず、商品の流通体制や環境負荷などを見渡した上でバランスの良い適正価格を考えるようになると言います。イタリアの農業生産者団体コルディレッティのリポートによれば、GASには現在約700万人が参加しているそうです。イタリアの新たな買い物スタイルとして、既に定着しつつあると言えるでしょう。
昨年から深刻な景気後退に陥っているイタリアでは生活費を切り詰める人が増えています。伊紙AGIによれば9月下旬、ローマで開かれた大規模な農業祭「チビ・ディタリア」では初めてイタリア産の同価値の品物を交換する物々交換の市場が設けられました。絵画とサラミ、花とワイン、箱詰めのリンゴと彫像といった具合です。不況の中、実体経済をサポートすべく1ユーロも使わない商品取引を実現させたこのアイデアには「4人に3人のイタリア人が興味を持った」とコルディレッティは後日のリポートで伝えています。
複雑化・巨大化してしまった現在のサプライチェーンをGASというシステムの中でごくごくシンプルに考えてみたり、はたまた昔ながらの物々交換を再現してみたり。消費の原点に立ち返ることで経済危機の独創的な解決策を探ろうとするイタリア市民の発想力とたくましさには、私たちにも学ぶところがたくさんあるように思えるのです。
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