Food
2013.04.18 大野 多恵子
外食産業ではまだ食べられる食料がたくさん残ってしまいます。新横浜国際ホテルでは、宴会で食べ残しになった料理を持ち帰るサービスを試みています
世界では、飢えに苦しんでいる人が約9億人いる一方で、人が食べるために生産された食料の約3分の1が捨てられているという現実をご存じですか? それは保存が悪かった、売れ残った、食べきれなかったなどというさまざまな理由によるものです。社会のその仕組みをなんとか組み替えることができないかと、2012年12月に「フードロス・チャレンジ・プロジェクト」が発足しました。
国連食糧農業機関(FAO)日本事務所の大軒恵美子さんが代表を務め、博報堂が事務局を務める共創型プロジェクトは、実行委員会としてNPO法人ハンガー・フリー・ワールド、慶応義塾大学システムデザイン・マネジメント研究所ソーシャルデザインセンターが参画しています。2013年1-3月期に実施した第1弾プロジェクトには、パートナー企業として味の素、東芝テック、ニチレイフーズ、モスフードサービス、また一般生活者などさまざまな視点を持った人たちが集まりました。
フードロス問題は、生産者、事業者、消費者それぞれの場で起こっていることで、例えば農家では豊作時や規格外品の廃棄、小売業では売れ残り、外食では食べ残し、家庭での賞味期限切れによる廃棄などが挙げられます。
そこで、3月にはプロジェクトメンバーによるスタディツアーが行われ、フードロスに関して先駆的な取り組みをしている現場を訪れました。地域の循環を意識した農業を行っている農場、魚の残さを魚肥に変えているかまぼこ製造会社、品揃えを確保しつつ売り切りを目指すスーパーマーケット、宴会料理を持ち帰れるドギーバッグを導入しているホテル、生産と直結して食材を無駄なく使う居酒屋など。また、一般家庭の食を中心としたライフスタイル調査も行いました。
ツアー後のワークショップでは、生産、加工、流通、外食、消費などの全体構造を見ながらフードロス問題のつながりを紐解き、例えば消費者が賢い選択による買い物をすれば、売る側はそれなりの供給量を考え、生産者は持続可能な自然に沿った農業ができるなどの関係性が浮かび上がってきました。
大軒さんは、「さまざまな分野の人が一緒になってプロジェクトを進めたことは、とても意義のあること。大切なことは食への感謝や資源に対する価値観など、結局は食文化や暮らしの原点に返るようなキーワードがたくさん出されました。今後この結果をまとめ、さらなるアクションを起こしていきたい」と話しています。
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