Food
2014.03.24 高木 彩香
マーマメイドのお母さんたち。左からチエさん、ヒロミさん、ヒロコさん
宮城県石巻駅から山道をバスで1時間半弱...ここ牡鹿半島、鮎川浜は漁師の町です。そしてそこに「ぼっぽら食堂」はあります。
まだ寒い3月、「こんにちは」と私がぼっぽら食堂の扉を開けると中で3人のお母さんがまかないを食べていました。「残り物だけど」と言いながら、まかないを出してくれたのは牡鹿漁業協同組合女性部のお母さんたちで、冗談を言いながら楽しそうに話しています。グループの名前は「マーマメイド」。名前の由来は、漁業から「マーメイド」、そしてお母さんが作るから「マーマメイド」。名付け親はメンバーの息子さんです。今日のお母さんはチエさん、ヒロミさん、ヒロコさん。「お弁当見せたかったんだけどね~、今日は完売で」
東日本大震災で鮎川浜も津波の被害を受けました。「家の残った人たちでこの食堂を始めたの。住民の中には家を流されちゃった人たちもいるから。何もなくなったから、おにぎりとかご飯とかそういうものをつくろうって。家は残っても船はないとかさ、仕事が無いんだもん。最初この食堂を始めるのに、資金はどうするってミサンガ作りが始まった」。販売しているミサンガは漁網の補修糸で出来ています。「全部流されちゃったから、漁網は高知とかあっちの方からもらって。ナイロン製だからつるつるして結ぶのに苦労したよ。でもなかなか切れねえんだよな」。切れないミサンガは絆を意味しています。1本1000円です。500円は手間賃に、500円は次の仕事づくりのための貯金にあてました。
そして2012年7月、貯金を元手にオープンしたのが「ぼっぽら食堂」です。食堂といっても、お弁当屋さん。お母さんたちの手作りです。「ぼっぽら」とは方言で、「急に・突然・不意に」といった意味です。メニューはありません。お客さんは主に復興工事の人。今ではミサンガの生産数は減っていますが、一つ500円の日替わり弁当は1日70食程を売り上げています。「お客さんが来なくなったら寂しいけど、それが復興」とチエさんは語りました。
東日本大震災からまる3年。私が浜のお母さんたちから感じたのは、あたたかさとともに強さでした。始めての場所なのに居心地がいい...それはお母さんたちの愛情を感じるからでしょうか。みなさんもぜひ牡鹿半島に訪れた際は、お母さんたちのぼっぽら弁当食べにいってみてはいかがですか。
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