Food
2014.12.05 平澤 直子
Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by Christopher Paquette
今秋、日本とカナダの間で有機製品に関する同等性協定が成立しました。これにより来年1月1日から、両国のオーガニック製品(ただし農産物および農産物加工食品のみ)が自由に輸出入できることになります。
通常、日本のオーガニック製品(※1)を「オーガニック」と表示して海外で売るには、改めて販売先国の定める認証を受けなければならず、手間とコストがかかっていました。しかし、今回のような同等性協定を販売先国と結ぶことにより、日本でオーガニックの認証を受けた製品は、同国の認証を受けずともオーガニック製品として売ることができるようになり、日本にとっては輸出機会の拡大となります。もちろん、日本に海外のオーガニック製品を輸入する場合も同じで、この協定により、日本のオーガニック市場にさまざまな海外オーガニック製品が流入することになります。
日本はすでにオーガニック食品市場シェア第1位のアメリカ(シェア約44%)、第2位のEU(約41%)、第4位のスイス(約3%)とこの協定を結んでいて、このたび第3位のカナダ(約4%)ともこれを締結したことで、世界のオーガニック食品市場の94%へのアクセスを手に入れることになりました(日本は第5位で約2%のシェア)。
※シェア数値はスイス有機農業研究所(FiBL)・国際有機農業運動連盟(IFOAM)の資料参照
世界のオーガニック食品市場は約640億ドル(約7兆7000億円、2012年)、カナダは約21億ユーロ(約3100億円、2012年)です。日本も約400億円(2004年)から約1300億円(2009年)へと成長していますが、いまだにオーガニック食品は一般消費者に広く浸透しているとは言えず、毎週オーガニック食品を購入する人はわずか21%程度にとどまっています。
これに対しカナダで毎週オーガニック製品を購入する人は58%、さらに彼らの98%が今後オーガニック製品にかける金額を増やす予定だという調査もあり、2009年にオーガニックに関する法規制ができたばかりのカナダでは今、日本よりもオーガニック熱が高まっているようで(※2)、日本からの輸出拡大が期待できます。
なお、日本のオーガニック食品の同等性協定を利用したEU向け輸出は、EUと同等性協定を締結した2010年には約27トンだったのが3年で約160トンに急増、スイス向けは締結年(2012年)には31キロだったのが翌年は約5トンに急増しているため、今後のカナダ向け輸出量もかなりの増加が期待できるのではないでしょうか。
一方で、カナダからの輸入により日本のオーガニック市場もますます活性化することが期待されます。メープルシロップやブルーベリーといったカナダの特産品もオーガニックで選べるようになるかもしれませんし、これに乗じてカナダのオーガニックコスメが日本に上陸するかもしれません(※3)。またカナダからの新製品に触発され、日本のメーカーが独自の製品を開発することも期待でき、日本のオーガニック市場の活発化にもはずみがつきそうです。
※1 日本で「オーガニック」基準が設けられているのは「農産物」および「農産物加工食品」のみで、これらに関しては、「有機JAS」認証を受けた製品のみが「有機」や「オーガニック」と表示できる。一方、化粧品などは日本に基準がないので協定外となる。
※2 カナダのオーガニック認証製品には、日本にはない乳製品、肉、蜂蜜があるためオーガニック食品の間口は日本より広い。
※3 日本にもカナダにもオーガニックコスメの定義はないが、独自にオーガニックをうたうコスメブランドはカナダにも複数ある。
関連するURL/媒体
http://www.this.ne.jp/news/detail.php?nid=514