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小規模農家と消費者を直にオンラインで結ぶ「Food Assembly」が地産地消を後押し

2015.12.25 河内 秀子

地産地消への注目が高まり続けるドイツ。しかしその反面、農地の買い占めやオーガニックのスーパーマーケットチェーンの台頭などにより地元の小さな農家、生産者たちは苦戦を強いられているのが現状です。そこで、ドイツにじわじわと広まってきているのが「The Food Assembly」。消費者と作り手を直につなげるオンラインプラットフォームです。2011年、フランスでMarc-David Choukroun とGuilhem Chéronが地元の工房や家族経営の農家などを支援しようと始めたこのプロジェクト。あっという間に広がって、いまでは国内700カ所以上で開催されているそうです。2014年に西ドイツ、ケルンに上陸し、ベルリンでも開催が始まりました。

システムは非常にシンプル。まず市内の各エリアにいくつかのグループが点在しているので、開催場所、日時と取り扱い商品によって自分が参加したいところを選んで、無料登録。オンラインで商品を選んで注文、支払いを済ませます。開催は週1回、2~3時間ほどで、当日は販売はなく、注文したものを直接生産者から手渡ししてもらうだけ。各グループにはまとめ役がいて、生産者のセレクトや情報提供を行うほか、クリスマス前にはパーティーを企画したりもします。

ノイケルン地区のコワーキングスペース内で開催されているFood Assemblyのまとめ役、Sun Mee。「ここにオフィスがあるので、もともと買い手として参加していたんです。スーパーマーケットでは手に入らない食材が買えるのがうれしいところ。もっと販売量を増やして生産者を支えていきたい」

参加できる生産者の条件としてはドイツの場合、ベルリンから約150キロ圏内にあること、規模が小さいこと。野菜農家、きのこ栽培農家、ヤギ酪農家、ソーセージ工房、養蜂家、豆腐工房、製パン工房......1グループに様々な商品の作り手が混在するよう、バランスよく配分されています。

フレッシュチーズやジビエを使ったオリジナル食品を販売するOgrosen Organicのユリア・ザウワーマンさんは、「丸一日市場に立つより短い時間で、しかも販売する量も決まっているので無駄がありません。しかも買い手に手渡しするシステムなので、商品の説明をしたり、評判を直に聞くこともでき、私たちのようなスタートアップの生産者には助かります」とThe Food Assemblyに参加している理由を語ります。チェーンのスーパーなどに卸す場合と異なり、マージンもかかりません。ただ、まだ販売量が少ないため、これだけではビジネスが成り立たないという弱点も。

「畑から消費者にダイレクトにつながっているというコンセプトが、私たちと同じなのが気に入って参加しました。儲かるかと言われたら、まだ赤字ですが(笑)」とカカオ豆の栽培からチョコ作りまでを全て行う、人気のチョコレート工房Belyziumのクラウス・ボエズルさん。店はベルリン市内ながら、カカオ豆の畑自体は中央アメリカ、ベリーズにあり、「地産地消」のコンセプトから微妙に外れるため、規則によって1カ所では1カ月に1回しか参加できません。そのため、複数のエリアで販売しているといいます。各地区で客層も異なり、お店の宣伝にもなるそうです。野菜農家Luch-Gaertnereiのアンゲリカ・フィーツェ=グラウトさんは「ホスト役が良いと、生産者同士も仲良くなり、まるで大きな家族のようです」とにっこり。


笑顔がステキなLuch-Gaertnereiのアンゲリカさん。「生産者としてのメリットは、コミュニティができること。作り手とも買い手とも仲良くなれるのよ」


商品受け取りの際には販売はないが、試食や作り手からじかに話を聞けることこそがFood Assemblyの楽しさ!

現在、買い手として登録されている人の数は1地区1000人以上ですが、定期的に買い物をする人は15人ほどだそう。フランスやイタリアに比べ、食品にかける費用が少なく、土地のものを食べるという意識も薄いドイツ。そのため価格帯はオーガニックのスーパーマーケットチェーンを基準にしています。それ以上だと売れないそうで、ドイツでのスタートは苦戦しているよう。

しかし、消費者の「この食べ物はどこから来ているの? できれば地元で買いたい」という声は大きく、参加者も増えつつあります。


ヴェディング地区のパブで開催されているFood Assemblyをまとめる、Antonia Hasler。ほかの地区に比べて青空市場やオーガニックのスーパーマーケットが少ないこのエリアは、買い手が多い。古くから環境保護運動が活発なシェーネベルク地区の買い手は年齢層が高め、購入量も多い、など、エリアごとに特色も豊か。それに合わせて生産者を選ぶのもまとめ役の仕事だ

水菜やなめこ、ジビエといった、入手しづらい食材が手に入ると聞いてわたしもさっそく登録してみました。商品受け取り日時が決まっているのは少々面倒ですが、実際に作り手の人から話を聞いたり、試食ができたりするのはうれしいもの。種類や数が限られるため、毎日の買い物を全て賄うのは難しいですがちょっと変わったものを試したり、いつもの買い物を補充するように使っています。

少額の買い物ですが、小さな作り手たちを少しでも支え、現在と将来の自分の食生活を豊かにできるこのプロジェクト、応援していきたいと思います!



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ベルリン、ドイツ (ヨーロッパ/ロシア

河内 秀子