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世界で広まる「ほったらかし果樹」をシェアするプロジェクト

2016.09.21 宮原 桃子

ポートランド・フルーツ・ツリー・プロジェクトで収穫を楽しむボランティア

街を歩いていると、たわわに果物が実っているのにずっとそのまま、という木をみかけることはありませんか? 私はそんな果樹をみるたびに、「もったいないな、所有者の人はこの果物どうするのかな?」と気になってしまいます。

そんな果樹を、地域や人びとのために役立てようというプロジェクトが世界各地で広がっています。サステナブルな街として定評のある米国ポートランドでは、NPO「ポートランド・フルーツ・ツリー・プロジェクト」が、地域でほったらかしになっている果樹をその所有者に登録してもらい、 収穫ボランティアを派遣。収穫した果物は、半分は地域のフードバンクに寄付、半分は収穫ボランティアの手に渡ります(所有者も希望すれば25%までは受け取れる仕組み)。 収穫ボランティアの半分は、低所得者の人びとだそうです。

収穫された果物の少なくとも半分はフードバンクへ寄付される

果樹の所有者にとっては、例えば高齢や多忙が理由で収穫が難しい、収穫しても自宅では消費しきれない、地域に貢献したいといったニーズが満たされ、食べ物や生活に困る人びとにとっては、収穫ボランティアやフードバンクを通じて助けになります。また、地域や社会に貢献したい個人や企業、収穫体験をしたい人などにとっては、収穫ボランティアは一つの良いチャンスとなります。このプロジェクトは、いくつものニーズを同時に満たす活動として注目を集め 、今では4300本以上の果樹が登録されています。2015年は約41トンの果物が収穫され、うち3分の2がフードバンクなどへ寄付されました。同団体は、この他にも、地域住民を巻き込んだコミュニティー果樹園のプロジェクトや、果樹栽培や食料の保存方法などを学べるプログラムも行っています。こうした活動は、アメリカ国内でもシアトルの「シティ・フルーツ」やカリフォルニア州サンノゼの「ヴィレッジ・ハーベスト」、カナダでも「ノット・ファー・フロム・ザ・ツリー」など、各地で取り組みが広がっています。

また、ドイツでは、地域で放置されていて誰でも収穫できる果樹の情報を登録する、インタラクティブな地図サイト「ムントラウプ」が2009年に誕生。「○○公園で梅の実が採れるよ」 「桑の実があそこにあったよ」というような日常的な友人同士の口コミを、より広くシェアする試みです。

ドイツの果樹登録サイト「ムントラウプ」では、どんな果樹が街のどこにあるのか、わかりやすく表示されている

この地図サイトに登録されている果樹は、基本的に公園や道路沿いなど公共エリアにあるものですが、果樹の所有者でなくても誰でも登録できる仕組みゆえに、果樹の所有者の権利を侵害しないこと( 登録する前に所有権や収穫の可否を確認するなど)や、樹木や周辺環境への配慮、適切な収穫方法などのルールを設けています。利用者の自己責任や倫理観に委ねられている部分もあるため、倫理的な意識や行動を訴えながら、地域の資源を有効に活用しようとしています。同サイトには、現在ヨーロッパ、北米、南米、アジア、 オーストラリアなど50カ国以上、2万3000カ所の果樹情報が登録されています(サイトはドイツ語のみ、英語化も計画中)。 ムントラウプでは、コミュニティーの共有資源を増やすべく、果樹を植える新たな活動も始めています。

食糧難とともに食品廃棄の問題が大きく取り上げられる現代。地域の資源や人びとの関係、ニーズを有効に活用して、食料を無駄にしないためのさまざまなアプローチが試みられています。 あなたの街でも、できることがあるかもしれませんね!



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宮原 桃子