NTT DATAThink Daily

  • 地球リポート
  • 地球ニュース
  • 緊急支援
  • 告知板
  • Think Dailyとは

地球ニュース

RSSrss

Imagination

作家・東田直樹が自身の自閉症についてつづった本が海外で話題

2013.10.11 ささ とも

東田さんの著書(左)と話題の英訳本(右)

東田直樹さんが中学2年生の時に自身の自閉症について書き、2007年に書籍『自閉症の僕が跳びはねる理由』が出版されて話題になってから6年。英語版が2013年7月に出版され、今度はイギリスやアメリカで注目されています。

英訳を手掛けたのは2013年3月に公開された映画『クラウド アトラス』の原作者であるイギリスの著名な作家デイヴィッド・ミッチェル氏と日本人の妻ケイコ・ヨシダ氏。二人には自閉症の男の子がいて、ヨシダ氏が偶然この本を見つけたことが始まりでした。

Asymptote Journal誌のインタビューでミッチェル氏は、自閉症についてはこれまでにも何冊か読んできたが役に立つものはなかった。でも、この本を読んで初めて息子が感じていることを語ってくれているように感じたと述べています。二人はさっそく英訳したものを子どもの先生や世話をしてくれる人たちに配りました。「自閉症の子どもの頭の中は他人が入り込めないような混乱状態か、あるいは大して何もないように思えるが、実は問いかけや学習、分析をしていたり、フラストレーションを抱えていたりしているんだ。このことを周りの人たちに気づいてほしかったからだ」

その後、イギリスで英訳版『The Reason I Jump』が出版され、アマゾンのベストセラーにランキング入りし、8月にはアメリカでも出版、ニューヨークタイムズ紙、シカゴトリビューン紙など大手メディアがこぞって取り上げ反響を呼んでいます。ヨーロッパ諸国8カ国での出版も決まりました。この本が自閉症だけでなく、もっと普遍的なテーマが含まれていることが認められたと言えます。

本書は自閉症の人たちの言葉や対人関係、活動に関する58の疑問を東田さんが答える形式で、会話ができないため、筆談やパソコン、文字盤を使って作成されました。「いつも同じことを尋ねるのはなぜですか?」という問いに、「どうしてかと言うと、聞いたことをすぐに忘れてしまうからです。......物事が分かっていないわけではありません。記憶の仕方がみんなと違うのです。......みんなの記憶は、たぶん線のように続いています。けれども、僕の記憶は点の集まりで、僕はいつもその点を拾い集めながら記憶をたどっているのです」と答えています。東田さんはこのように多くの答えで「普通の人」と「自分」の行動の違いを客観的に分析してわかりやすい言葉で説明しています。自分は普通と違うと気づいたきっかけが、著書の冒頭にあります。

 どうして、自分が障害者だと気づいたのでしょう。それは、僕たちは普通と違う所があってそれが困る、とみんなが言ったからです。しかし、普通の人になることは、僕にはとても難しいことでした。

「自閉症の人は普通の人になりたいですか?」という問いに、東田さんは「障害者として生きるのが辛くて悲しくて、みんなのように生きて行けたらどんなにすばらしいだろう」と思っていた、でも、今なら「もし自閉症が治る薬が開発されたとしても、僕はこのままの自分を選ぶかもしれない」と答え、後にこう続けます。

 ......障害のある無しにかかわらず人は努力しなければいけないし、努力の結果幸せになれることが分かったからです。......自分を好きになれるなら、普通でも自閉症でもどちらでもいいのです。

巻末に掲載された家族への想いをつづった短編小説とともに、自閉症患者と健常者という垣根を越えて深く考えさせられる内容です。

2007年にある賞を受賞した時に新聞の取材で、東田さんは「僕は書くことが大好きなので、とてもうれしい。将来は作家になりたい」と夢を語りました。その夢は今海外にまで広がり、今や最も有名な日本人作家と言えるかもしれません。今後の活躍に期待が寄せられています。



関連するURL/媒体

Bookmark and Share

Thinkテーマ別に読む

Imagination

このニュースの地域

イギリス (ヨーロッパ/ロシア

ささ とも