NTT DATAThink Daily

  • 地球リポート
  • 地球ニュース
  • 緊急支援
  • 告知板
  • Think Dailyとは

地球ニュース

RSSrss

Imagination

ナポリ発! コーヒーのおすそ分け文化「保留コーヒー」世界へ

2013.12.02 高木 彩香

イタリアのナポリでは、カフェに入ったとき「il caffè sospeso」とコーヒーをオーダーしたら、1杯を飲み、そして2杯分の料金を支払います。1杯で2杯分の料金、なぜでしょうか?

ナポリには「il caffè sospeso」という伝統的な習慣があります。それは「保留コーヒー(Suspended coffee)」と呼ばれ世界中で広がりをみせています。

さて、自分以外のその1杯分のコーヒー代...それは見知らぬ誰かが飲むコーヒーになります。ナポリはもともとあまり裕福な街ではなく、貧しい人も多く暮らしていました。例えば、コーヒーが飲みたいけれど手持ちのお金がない人がカフェに来たときに「保留コーヒーはありますか?」と聞いて、もしあればコーヒーを無料で飲むことができるのです。

「保留」と訳されている「sospeso」は「未決定の、宙ぶらりんの」という意味があります。しかし、「il caffè sospeso」には「おすそ分け」という優しい気持ちも含まれているのではないでしょうか。お金持ちも貧しい人も「みんなでコーヒーを楽しもう」という精神は、おおらかなイタリア人らしいものだと思います。

世界中の人々が「il caffè sospeso」の考えに共感し、現在「保留コーヒー」のシステムは多くのカフェで取り入れられています。最近ではイギリスのスターバックスがこのシステムを導入し、その1杯分のコーヒー料金は慈善団体Oasisに寄付されています。日本でも保留コーヒーSuspended Coffee Japanが立ち上がり、「保留コーヒー」を導入する店舗も少しずつ増えています。

発祥の地ナポリではだんだんとその伝統を続けるお店は減ってきています。しかし、ナポリにはそれをやめないでほしいと思う人も多くいます。2010年にRete del Caffè Sospeso(保留コーヒーネット)が立ち上がりました。イタリア中に「il caffè sospeso」を推奨するポスターが貼られ、ナポリの市長は「il caffè sospeso」の文化をもっと世界に広めようと 2011年、世界人権デーでもある12月10日を、「Giornata del caffè sospeso(保留コーヒーの日)」と決めました。この日は、イタリアの各地で「il caffè sospeso」文化回復とともに、様々なイベントが行われます。例えば、人権映画祭やカフェでの音楽コンサートや演劇、読書会などです。

ラッキーなことがあった日、カフェに立ち寄り2杯分の代金を支払ってコーヒーを飲む。自分も見知らぬ誰かも1杯のコーヒーで、身体も心もあたたまる。幸せのおすそ分けの連鎖は、この寒い冬にどれだけ多くの人の心を満たしてくれるでしょうか。もしどこかで「保留コーヒー」を見かけたら、見知らぬ誰かへコーヒーをプレゼントしてみてはいかがですか。



関連するURL/媒体

Bookmark and Share

Thinkテーマ別に読む

Imagination, Peace

このニュースの地域

イタリア (ヨーロッパ/ロシア

高木 彩香