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Imagination

今月のレコメンド: しょうぶ学園のドキュメンタリー映画「幸福は日々の中に。」

2016.07.01 岩井 光子

©silent voice/werner penzel film production

人はどんなときに幸せを感じるのでしょうか? 誰かにほめられたり、認められたりしたとき。あるいは、がんばって進めた仕事やプロジェクトが無事終わったとき、ライバルに勝利したとき―。ごく当たり前に皆さんはそんなふうに思うのではないでしょうか。でも、鹿児島の知的障がい者施設「しょうぶ学園」では、少し事情が違います。

©silent voice/werner penzel film production

しょうぶ学園の日常に密着したドキュメンタリー映画「幸福は日々の中に。」に映し出されるのは、モノ作りに没頭する幸せそうな園生たちの姿。よく見ると、作っているものはちょっと不可解です。布は同じところを執拗に糸で縫ったためにかたく縮み上がっていたり、木製品は大胆に彫り過ぎてしまっていたり、絵画では同じモチーフや文字を延々と描き続けていたり―。でも、彼らの並々ならぬ集中力や至福の表情を見ていると、ヴェルナー・ペンツェル監督(同作は茂木綾子さんとの共同監督)が言うところの、「彼らはみんなスペシャル」の意味がだんだんわかってきます。彼らの幸せが、私たちが単純に思い浮かべてしまう「がんばる」や「ほめられる」とは、少し違うところにあることも―。

映画では、「ありのままの彼らを尊重する」という他の福祉施設とは明らかに違うスタイルを確立した学園の苦労話が語られることはありませんが、こうした「幸せ」な日常や、園生と福森園長の、家族のような、古くからの友人のような、ユーモアにあふれたやりとりが幾度となく登場します。「まぁ、できるだけ彼らが幸福な顔をしている状態を作るというのが僕らの仕事だから」とひょうひょうと語る福森園長。福森さんは園生一人ひとりを驚くほどよく観察し、思慮を重ねる福祉のプロですが、時に子どものようにひざまくらをしてもらってうとうとしたり、露天風呂で泳いだり、園生をからかってみたり―。無邪気にふるまう福森さんを見つめる園生が、ふと母親のように見えた瞬間があり、ハッとしました。世話をする、されるといった固定した関係ではなく、自由にその関係が行き来する。たまには、逆転しそうにもなる。"インクルージョン"などと言ってしまうと小難しくなりますが、その未来を既に体現してしまっているしょうぶ学園のクールさに、またもややられてしまった70分間でした。

©silent voice/werner penzel film production

先行して海外で公開されたこの映画の英語タイトルは「while we kiss the sky」。ジミ・ヘンドリックスが歌う「パープル・ヘイズ」の"Acting Funny, but I don't know why. Excuse me while I kiss the sky."から引用したと書かれています。福祉ジャンルというよりは、音楽家のドキュメンタリーのような、この映画の特長が感じとれる良いタイトルだなと思いました。ちなみにタイトル音楽はあの伝説のミュージシャン、フレッド・フリス。音楽ファンはその辺りも要チェックです。

日本では明日7月2日から渋谷のシアター・イメージフォーラムで上映開始。全国で順次公開されます。

しょうぶ学園についての詳しいリポートはこちら



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