Living
2013.06.07 大野 多恵子
冷蔵庫も洗濯機も掃除機もない暮らし...。「むしろその方が心地よく、本当の豊かさが感じられるのです」と、情報やモノにあふれている私たちの現代生活に一石を投じるアズマカナコさんの著書『電気代500円。贅(ぜい)沢な毎日』(発行:阪急コミュニケーションズ)。「お金をかけずに、手間をかける。こうした生活こそが自分にとって最高に『贅沢』」。「機械に頼ると体は弱っていく。『便利』は行きすぎると『不便』になるんです」などなど、この本の中には、わたしたちが日ごろ忘れていたような本質を突く言葉が散りばめられています。
アズマさんは、夫と2人の子どもとともに、東京郊外の一軒家に住む主婦。空き家だった築60年の日本家屋を丁寧に手直しして住み、電化製品に頼らない生活は、昭和初期のころを彷彿(ほうふつ)とさせます。そこには、「もったいない」が口癖で、あるものを生かしてきたという祖母の影響があるといいます。
まず、冷蔵庫がないという生活。食料は必要な量だけを買い、常温で保存できないものは早めに食べきり、あとは保存食を作っておきます。現代生活に冷蔵庫は欠かせないと思いがちですが、冷やして長く保存する食材が実はそんなに多くなく、ともすれば冷蔵庫が「保管庫」になっている家庭が多いのかもしれません。
洗濯機もないので、たらいと洗濯板を使い、固形石けんで手洗いします。掃除機も使わず、掃除はほうきと雑巾(ぞうきん)で。これは「場所も取らない、大きな音もしない」すぐれもの。照明は電球が3つだけ。電子レンジもエアコンもなく、従ってアズマ家の電気代は月500円というわけです。
また、電化製品だけでなく、モノを減らして「持たないことの心地よさ」を感じています。例えば、先にタンスの大きさを決めてしまい、服はそこに入るものだけしか買いません。基本は1シーズン3パターンの着回しで、使わなくなったら人に譲るなど、循環させていきます。
モノだけでなく、情報があり過ぎることもストレスになりがちな現代社会。アズマさんは携帯電話も持たず、ネットに頼るのも必要最小限。遠い人とのつながりより近所とのつながり、顔の見えるつながりを大切にしているのです。
「今あるものへの感謝を忘れて、ないものに思いを馳せるといつまでたっても生活を楽しむことができません。今の生活に感謝して、楽しむことが、いちばんの贅沢なのです」。すべてが無理をしているのではなく、この暮らしが「好きだから」。そう言い切るアズマさんの笑顔が見えるようなおすすめの1冊、ぜひみなさんも読んでみてください。
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http://books.hankyu-com.co.jp/list/detail/1173/