Living
2013.11.18 寺部 妙香
美しく自然豊かなトラブゾン地域の村チャンブルヌ。村人の生活はゴミ廃棄場の建設で一変します。反対する農民を裏目に、建設は進んでいきます。そして運びこまれたゴミから出た汚水は美しい小川を汚し、強烈な悪臭は村人の「当たり前」の日常を蝕(むしば)んでいきました。そして村人は国を相手に美しい故郷の自然と生活を取り戻していくために立ち上がります。
監督はトルコ系ドイツ人のファティ・アキン。30代にしてベルリン、カンヌ、ヴェネチアの世界三大映画祭を制覇した若手実力派監督です。ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞を受賞した「ソウル・キッチン」は日本でも公開され話題になりました。今作は2005年、監督の曾祖父の故郷であるこの村の実態を知ったことから撮影に着手しています。
本編で使われているスチル写真は村に住むフォトグラファーがゴミ騒動が起き始めてから撮影し続けてきたもの。撮影・製作スタッフだけでなく、村人たちの協力を得て出来上がった作品です。一方、約5年間に渡る村人と政府との戦い末にチャンブルヌの住民は3500人から1200人にまで減少。このゴミ廃棄場は今後2年間は稼働を続けるといいます。
「どこかで処理しなきゃいけないんだ」、何度も政府側の人が繰り返していた言葉です。
ゴミを出したあとの行方を知らない私たちにとって、自分たちの出したゴミが原因で自然が汚され、故郷を失う人がいるとは気づきもしません。日々の中でゴミを減らすために何が出来るでしょうか。
例えばこの映画が製作されたドイツ。ドイツでも「Der Müll im Garten Erden」というタイトルで1年前に公開されました。環境大国と言われるドイツでは、国民のエコに対する意識は日本より少し高いかもしれません。例えばスーパーの袋は日本の様に無料ではなく、お金がかかります。そのためドイツ人たちは「Beuteltasche」と呼ばれるエコバッグを買物袋として持ち歩いています。
一つひとつの行動は小さいかも知れません。でも、その小さな行動を続けたり、周りの人に広めたりすることで大きな力になってゆくのではないでしょうか。
映画は重い内容とは反面、テンポ良く展開していきます。ゴミ問題と向き合いつつも陽気さを忘れない村人たちから、他人ゴトを自分ゴトにするヒントが得られるかもしれません。
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