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ベルリンで、反TTIPデモに25万人が集まる!

2015.10.23 河内 秀子

連邦議会議事堂前。連邦首相アンゲラ・メルケルは10月18日から開催されているドイツ金属産業労働組合の労組デーで「分別のあるグローバル化の形成を」と、再度TTIP支援を呼びかけていますが......  photo by Hideko Kawachi

日本で、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の大筋の合意が伝えられている中、10月20日から、EU版のTPPとも言える「TTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)」の協議が再びスタートしました。それに先駆けて10月10日、ドイツの首都ベルリンではTTIP反対デモが開催され、約25万人が集まりました。開始の正午前に中央駅へと向かったのですが、駅に近づくにつれて道が旗を持った人たちであふれ、地下鉄から遠距離鉄道までが乗り入れる駅構内は、市内はもちろんドイツ各地からの人でいっぱいに! それもそのはず、昨年11月のピュー研究所の発表によれば、ドイツでTTIPに賛成する国民の割合は過半数を割っています。オーストリア、ルクセンブルクも同じ。フランスはちょうど50%、次いでスロベニア、イタリアが続きます。やはり、食の安全性への意識が高い国だからでしょうか?

中央駅からスタートし、シュプレー川を渡って議事堂へ......「TTIPってひどい!って僕思う」と可愛いプラカードを持った子どもの姿も

先日もお伝えしたとおり、TTIPが問題視されている大きな理由の1つが、「食の安全」のゆらぎ。遺伝子組み換え作物や成長ホルモン、抗生物質の使用の規制が緩和され、農業が採算のみを考えるビッグビジネスとなり、ひいては小規模な地元農家や在来の古来種の農作物も存続の危機にさらされるのではないか? そして、いずれは固有の食文化すら消えていってしまう可能性もあるのでは......?

しかし、今回の参加者が反対している理由は本当に様々。「そもそも、こういった協定を決めるのに内容が詳しく国民に知らされてないなんてありえない」「政治家が、大企業の損得だけを考えて権力を乱用している」「民主主義的ではない」「環境破壊につながる」「労働環境の悪化を促す」「文化の多様性を否定している」......などなど、ちょっと周りの参加者に聞いてみただけでも、いろいろな意見が集まってきました。特に協定の不透明性と、大手コンツェルンへの肩入れを指摘する声が多かったです。

Greenpeaceやfoodwatchなどのいわゆる活動家はもちろん、ドイツ各地からの労働組合、その中にトルコ人労働者団体やベルリン清掃局がいたり、また家族連れやベビーカーを押して参加している夫婦の中に、警官が混じっていたり(警備隊ではなく!)。中央駅から連邦議会議事堂、戦勝記念塔(ベルリン天使の塔)までの大通り、約4.6キロを埋め尽くす人々は声高に主張を叫ぶというよりは、笑顔でのんびり。天気にも恵まれのんびりしたパレードのような、ストリートフェスティバルのような雰囲気に包まれていました。

ピンクカラーで文化の多様性を訴える?  音楽もテクノを爆音でかけているパレード車があるかと思えばブラスバンドあり、ドラム缶やゴミ箱を使ったり...だれもが好きな音楽を好きなように演奏しながら行進していたのが印象的でした

最終地点では、前日「Schnippel Disco 切れ端ディスコ」で準備された、なんと2トンもの規格外、廃棄品となる野菜を使った手料理がふるまわれたのですが、参加者が予想以上に増えたため、準備した料理が途中で品切れになるほどでした。残念ながら私は食べることができませんでしたが、こうした料理を食べることで「こういう食材が使えるのも地元農家があるからこそ。フェアな農業を応援しよう」という気持ちが、広がってくるのではないでしょうか。

市場調査機関TNSエムニド(Emnid)によってデモ後に行われたドイツ国内でのアンケートの結果は、交渉が始まってから最も低い支持率をマーク。TTIPを良しとしたのはわずか34%で、2014年2月の55%から大きく下がり、アンケート対象者の3分の2が、TTIPは環境と消費者保護、労働者環境を悪化させ、またTTIPが合意した場合、ドイツ国内のデータ保護スタンダードも低下するだろうと答えています。

ヨーロッパ中から集まった反TTIPの署名は、既に330万人以上に達しています。11回目となる今回の協議の動向はどうなっていくのでしょうか。固唾(かたず)をのんで見守りたいと思います。



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このニュースの地域

ベルリン、ドイツ (ヨーロッパ/ロシア

河内 秀子