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2017.05.17 宮原 桃子
©kwasibanane ドイツの環境都市フライブルクで広まるリユースカップ
世界のどこへ行っても、街を見回すと、コーヒーチェーンやカフェがあふれています。職場や街中で、使い捨てのコーヒーカップを手に持つ人を見ない日はないと言ってもいいでしょう。 使い捨てコーヒーカップの消費量は、例えば英国だけで1日約700万個、年間約25億個という驚くべき数で、 世界中で毎日大量のごみと化しています。近年では、マイカップやタンブラーを持ってお店に行く人も増えてはいるものの、急にコーヒー店に立ち寄る場合には持っていないこともあるし、マイカップを受け入れていない店もあります。
©Jodi Green
誰もがもっと参加しやすいように、今世界各地でさまざまな取り組みが行われています。ドイツのフライブルク市は、世界的に有名な環境都市でありながらも、毎年1200万個ものコーヒーカップが使い捨てられています。そこで、昨年11月から「フライブルクカップ」というコーヒーカップの再利用システムを始めました。市内の加盟店であればどの店でも、1ユーロのデポジット(預り金)を払えば、リユースできるコーヒーカップでコーヒーをテイクアウトできます。カップの返却とデポジットの返金は、 コーヒーを購入した店でなくても、 他のどの加盟店でも可能なのが便利なところ。カップは返却された店で洗浄され、その店で再利用されます。
©ASF Freiburg スタートして半年で加盟店は約5倍に
スタート当初は15だった加盟店は、半年を経た現在ではカフェやパン屋、レストラン、大学病院など70店以上に上ります。 このプロジェクトは、市がカップやデザインなどの運営費用を負担し、市の廃棄物処理を請け負う会社が運営を担い、 そこに賛同する店舗が参加しています。街ぐるみで取り組んでいるからこそ、誰でもどこでも利用しやすい仕組みになっています。 ドイツでは、ハンブルクやベルリン、 ローゼンハイムなど各地で同様のプロジェクトが広まっています。
©Peter Bauer ハンブルクのプロジェクトに加盟するカフェ「BERGTAGS」。カップは、生分解性素材で作られており、どの加盟店でも利用と返却が可能
英国でも環境保全団体「Hubbub」が、4月からロンドン中心部でコーヒーカップを回収しリサイクルするプロジェク ト「スクエア・マイル・チャレンジ」を開始。行政や鉄道会社のほか、コーヒーチェーン各社、ロイズやデロイトといった数々の大手企業が参加し、ロンドン中心部に約130ものコーヒーカップ回収ボックスを設置。回収ボックスには、 どの店のカップでも捨てることができます。1カ月間で50万個のカップをリサイクルするという最初の目標はすでに達成され、2017年中に500万個をリサイクルする計画です。
「スクエア・マイル・チャレンジ」では、大きな黄色いコーヒーカップの形をした回収ボックスを設置。通りゆく人たちを驚かせる、こんなキャンペーンも
使い捨てのコーヒーカップやペットボトルの消費量は、一人でも多くの人がマイカップやマイボトルに変えるだけで、世界中で大きく減らすことができます。こうした一人ひとりのアクションが大切なのはもちろんですが、それを柔軟に受け入れて促していく企業や地域の仕組みも必要です。企業や行政、NPO、消費者が一体となっ て街ぐるみの取り組みをすることで、よりダイナミックな変化をも たらすことができます。日本でも「マイボトル・ マイカップキャンペーン」が展開されていますが、社会全体でさらなるリユースやリサイクルの仕組みを築くことが求められていくでしょう。
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