Peace
2014.06.18 加藤 彩菜
(c)Buda Mendes/Getty Images ワールドカップ2014ブラジル選手
6月12日、サッカー・FIFAワールドカップブラジル大会が開幕しました。4年に一度のスポーツの祭典に世界中が盛り上がっていますが、今大会の開催国であるブラジルでは、各地でワールドカップに反対するデモが起こりました。華やかな大会の裏で、ブラジルの社会問題に対する市民の不満が募っていたのです。
ブラジルではワールドカップに続き、2016年にはオリンピックも開催されるため、政府はリオ・デ・ジャネイロに900以上も存在する貧困層の居住区ファヴェーラ(スラム街)の 安全化に取り組んでいます。しかし、実際には政策の対象外となる区域も多く、ファヴェーラの中でも最も危険地帯と言われる地区ヴィガリオ・ジェラウもその一つ。この地区を音楽で変えていこうと1993年に住民が起こした社会ムーブメントが「アフロレゲエ」です。
活動を始めた元麻薬密売人のアンデルソン・サーさんはヒップホップグループ「アフロレゲエ」を結成し、ファヴェーラ内で社会変革のメッセージを投げかけるパフォーマンスを行っていきました。グループは瞬く間に注目を集め、今ではファヴェーラの住民だけではなくリオ全体に影響を与える人気音楽グループとなっています。アフロレゲエはその後NGOとして、地区の住民や子どもが暴力や麻薬に走らないよう音楽やダンス、演劇などの芸術に打ち込む機会を提供してきました。元麻薬密売組織のボスや元ギャングリーダーの女性が、刑務所から出所した後に自分たちの住む地域をなんとかしたいと、アフロレゲエの活動に参加し、これまでに4000人以上が更生。運営メンバーの半数が服役していた経験を持っています。
制圧や、デモではなく、音楽で人を巻き込み、変わっていったファヴェーラ。2005年には、アフロレゲエの活動を追った「ファヴェーラの丘」(Favela Rising)というドキュメンタリー映画も作られました。
ワールドカップ、そしてオリンピックの開催地として世界の注目を集めるブラジル。この機会にブラジルの国内事情にも目を向けてみると、スポーツの祭典も違った視点で見えてくるかもしれません。
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