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ルームシェアで難民をサポートしよう
ドイツで始まった新しい支援のかたち

2015.09.04 河内 秀子

「難民ようこそ」のサイトトップページ。参加希望者の手続きはシンプルだ

難民の流入問題に揺れるEU。特に好景気が続くドイツを目指す人は多く、内務大臣のトーマス・デメジエール氏は「EU内の難民の4割をドイツが受け入れている」と語っています。

2015年には、昨年の4倍となる80万人の保護申請があるだろうと連邦政府は予測しています。地方自治体や州は対応に追われるなか、収容施設を狙った放火など難民への襲撃事件も相次ぎ、緊張した状況が続いています。その反面、市民による難民をサポートする団体が次々と立ち上がり、精力的に活動を展開しています。

そんなプロジェクトの1つが、ベルリン発の「Flüchtlinge Willkommen(難民ようこそ)」。難民の人たちを一般家庭にシェアメイトとして受け入れようというもので、2014年11月から部屋を仲介しています。

通常、難民はドイツに到着した当初は登録のための施設に入り、その後は収容所に移されますが、その代わりに、個々の難民を一般家庭で受け入れることで、よりよいドイツ語を学び、ドイツ社会にも馴染みやすくなる、知り合いも増える......というのがこの「難民ようこそ」のアイデア。サイトを通じて登録された部屋は2000以上にのぼり、現在までに約80人の難民が新たな「家」を見つけています。

発起人はゴールデ・エプディングと、マライケ・ガイリング、ヨナス・カコシュケの3人。社会福祉を学んだエプディングは、既にベルリンの難民をサポートする仕事をしていて、ガイリングは滞在許可待ちの移民向けのドイツ語コースの教師などの市民運動にかかわっていました。コミュニケーションデザインを学んだカコシュケは、在学中にリサイクル瓶を寄付するネットワークサイトを立ち上げたことから、ネットメディアを生かした社会福祉プロジェクトに興味を持ったと言います。

左から、エプディング、ガイリング、カコシュケ。それぞれコーディネートや法律的な質問へのアドヴァイス、プレス、コンセプトデザインや他団体との共同作業などを分担して担当している (c)Jean-Paul Pastor Guzmán / Flüchtlinge Willkommen

「難民ようこそ」への参加は簡単。部屋を貸したいという人は、住んでいる町や他のシェアメイトたちの平均年齢、使用可能な言語などをウェブ上で登録して申し込むだけ。その後、担当者との数週間の話し合いの後、気の合いそうな難民の人たちが紹介されます。決まれば入居までは数日。難民の置かれている立場は流動的で、長期計画が立てにくいからです。入居が決まったら、後は家賃です。月々3ユーロ~などの少額な寄付を家族や知人に募ったり、クラウドファウンディングで家賃を集めることが推奨されていますが、滞在許可申請中だったり容認状態の難民に関しては、費用の肩代わりをしてくれる州や自治体もあるので、そういった情報提供もしています。空いた部屋を無料で提供したいという申し出も多いそうです。期間は最短で3カ月、役所が支払いを引き受ける場合は12カ月以上が条件となります。

シェアメイトだったカコシュケとガイリングは、実際昨年12月にマリ共和国からの難民とアパートをシェア。「思ったより簡単で、いままでのどのシェアメイトよりも素晴らしい同居生活となりました」とガイリングは言います。彼は無事自分のアパートを見つけることができ、今年5月に引っ越したそうですがいまでも友人として、よく会っているそうです。「部屋を提供してくれる人には、なによりもオープンな気持ちでいてほしい」とガイリング。想像もつかないようなハードな日常生活、全く異なる文化を背景に持つ人たちとともに暮らすということは、決して簡単なことではないでしょう。しかし気が合えば素晴らしい、一生ものの出会いが生まれるのです。



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このニュースの地域

ベルリン、ドイツ (ヨーロッパ/ロシア

河内 秀子