Think the Earth

「日本人は原点に戻ろう」と伝える永六輔さんと、災害救援コーディネーターとして世界中を飛びまわるケン・ジョセフさんの共著による『日本に生まれてよかった！』。発行は2月中旬。東日本大震災という未曾有の災害が起きた3月11日のわずか半月ほど前。にもかかわらず、まるでそのために書かれたかのような文面に、心が動かされます。

戦後、焼け野原になった日本の復興ボランティアとして来日したアメリカ人を両親に持つケンさんは、日本生まれ、日本育ち。自分の役割は、やはり困った人たちを助けること、と仲間とともに災害援助を行うNGO「アガペハウス」を立ち上げ、災害があればすぐに現地へ飛ぶという素早さを身上としてきました。阪神淡路大震災のときに、両親が話していた戦後の「一面の焼け野原」を実感し、そこに改めて息吹き始めたエネルギーに、日本の原風景を見たと書いています。

永さんとは、国籍、宗教、年代が違っても、「日本に生まれ育ったことがどんなに幸せなことか」という思いは共通。永さんは、１年のうち300日以上旅暮らしをし、そこで出会った話を長年ラジオ放送で伝えてきました。本書では、人とのつながりが一番大切なこととして、戦争や憲法の話なども含め、「忘れてほしくない日本人の原点」について書いています。

今回の震災で、翌日すぐに仙台入りしたケンさんは、阪神淡路大震災を上まわる被災地で、戦後日本の姿を、またもや目のあたりにしました。「悲しみの反面、毎日が感動です。避難所では、普段けんかしていた家族が仲良くなり、隣人同士が助け合っています。豊かすぎた日本が、今まさに原点に立ち返るとき。これは日本の新しい出発点なのです」と、電話の向こうから熱いメッセージを伝えてくれました。本書の帯に書かれた「日本人よ　上を向いて歩こう！」は、タイトルの候補でもあったそうです。