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クラウドファンディングで「まき散らさない除染」を

2012.09.07 瀬戸 義章

新型の洗浄機でプールの除染を行うスタッフ photo by EARTH

8月7日、福島県郡山市の柴宮幼稚園で、「プール開き」が行われました。去年プールに入ることができなかった80人の園児達は、水の中で大はしゃぎだったそうです。

例年なら、プール開きは6月に行われます。それがこれだけ遅れてしまったのは、放射線量が基準値を超えていたからです。

そもそも国や市が今年、この幼稚園のプールを除染する計画はありませんでした。しかし、政府や自治体の動きをただ待つのではなく、少しでも除染活動を進めていこうという思いで5月、有志による「ごしごし福島基金」(代表・並河進)が立ち上がります。ネット上で寄付を募るクラウドファンディングの「READYFOR?」で支援を呼びかけたところ、236人から計151万4000円もの支援が集まりました。

プールの空間線量は、最も高い場所で毎時0.5マイクロシーベルトを超えていました。郡山市による小学校のプールの基準値は毎時0.23マイクロシーベルトです。除染を実施した結果、すべての箇所でこの基準を下回ることができました。

「除染すれば、大丈夫だということは分かっていましたから」

そう自信を持って話すのは、プールの除染を実施したEARTHの代表、吉田信一郎さんです。

EARTHは、除染分野で高い注目を集める郡山市の企業です。市町村や学校、企業から依頼を受け、道路や建物の線量測定と除染を手掛けています。

もともとEARTHは、赤外線を用いた建物診断を中心に業務を展開していました。しかし、震災直後に吉田さんが、原発作業員用・対テロ用にアメリカで作られた除染剤「Mass Effect」を手に入れたことをきっかけに、除染事業へと進出します。チェルノブイリ事故後の調査を指揮したジョージア大学のチャム・ダラス教授の指導を受け、現在は、首都大学東京の大谷浩樹准教授らと新たな除染技術の研究開発に取り組んでいます。

「大事なことは《まき散らさない》ことです」

と吉田さんは言います。なぜなら、仮に水で洗い流したとしても、放射性物質が消えるわけでは無く、またどこかに溜まってしまうからです。これは、チェルノブイリの除染の失敗の原因とされています。

そのためにEARTHは、高圧洗浄を行いながら、同時に水を吸引するという洗浄機を開発しました。集めた汚染水は、凝集沈降剤を使用し濾(ろ)過することで、放射性物質だけを集めることができます。つまり、水はリサイクルできるのです。今までは薬剤を使って放射性物質を集めていましたが、この洗浄機により、短時間かつ低コストで除染を行うことができるようになりました。

「除染」ということばを聞いて、「本当に効果があるのか」という疑問や、「利権ビジネスで稼いでいるのでは」という印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、こうして適切に除染が行われ、人々の生活が回復するという《事実》がここにはあります。だからこそ、吉田さんはこう訴えます。

「不信を持たれることの無いよう、除染に携わるすべての人々に《きちんとやりましょう》と言い続けたいです。私たちがここに住み続ける以上、放射性物質を取り除いていかなくてはならないのですから」



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福島、日本 (日本

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