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2014.09.21 ささ とも
ISS(国際宇宙ステーション1/10模型) ©ささとも
「はやぶさ」「きぼう」「イプシロン」「アトランティス」「キュリオシティ」―さて、これは何の名前でしょう? そうです、JAXA(日本)とNASA(アメリカ)が開発した宇宙機です(順に、小惑星探査機、国際宇宙ステーション・日本実験棟、ロケット、スペースシャトル、火星探査車)。これらが展示されている宇宙博(千葉県の幕張メッセで開催中)では、人類が初めて月に降り立ったアポロ計画や小惑星イトカワでのサンプル採取といった宇宙開発の歴史と最新技術を見ることができます。
今やアメリカや日本だけでなく、ロシアはもちろん、中国などの新興国も加わり、各国が競い合って進めている宇宙開発の進歩は目覚ましいものがありますが、そのマイナスの部分が気になりました。これほど多くの宇宙機を宇宙空間に放てば、地球環境と同じように、宇宙環境も人が入ることで損なわれるかもしれないということです。
宇宙博では昨年公開された映画『ゼロ・グラビティ』で注目された宇宙ゴミ(スペースデブリ)対策も取り上げられています。宇宙ゴミとは、地球軌道上に残された人工物体のことで、使い終わったり、故障した人工衛星や、人工衛星同士の衝突でできた破片などがあります。外務省によると、2012年に米国の監視ネットワークが地球軌道上でとらえた約10センチメートル以上の宇宙ゴミは約2万1000個以上、1~10センチメートルのゴミは約50万個、1センチメートル以下のものでは数千万個以上とみられ、秒速約7~8キロメートルというものすごいスピードで地球を周回しています。こうした宇宙ゴミが人工衛星や宇宙ステーション、船外活動中の宇宙飛行士などに衝突すれば大変な事故につながることから、この問題が深刻な課題に浮上しています。
対策の一つとして開発途中にあるのが宇宙ゴミの回収・除去技術です。JAXAでは宇宙ゴミの数や大きさ、分布状況を観測し、今後、宇宙機に衝突する確率などを予測する研究が行われています。研究から、すでに軌道上にある宇宙ゴミ同士が衝突して、数がどんどん増加する可能性があることがわかりました。こうした宇宙ゴミを減らすには「デブリ除去システム」が早急に必要となります。その仕組みは宇宙ゴミを捕まえて、軌道高度を下げて大気圏に突入させ、最後には燃え尽きるようにするというものです。
宇宙博で紹介されている「デブリ除去衛星」は宇宙ゴミの運動を観測し、ロボットアームなどでEDT(導電性テザー)を取り付けます。EDTとは数本のアルミワイヤとステンレスワイヤを数キロメートルの網状にしたもので、アームを使って宇宙ゴミに取り付けた後に伸ばすと、地磁場を横切って地球を周回することで誘導起電力が生じます。それを利用して電流を流し、地磁場との干渉でローレンツ力を発生させます。ローレンツ力は宇宙ゴミの進行方向の逆向きに働くため、宇宙ゴミの速度を減速させ、軌道高度を下げることができるのです。
今や、地球だけでなく、宇宙までもエコを意識する時代になっています。今後も宇宙開発に伴う形で宇宙ゴミを減らす取り組みを進めてほしいものです。
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