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「心のバリア」をぶっ壊せ 「超福祉展」が描く2020年の東京

2015.11.13 平澤 直子

超福祉展で話すピープルデザイン研究所代表理事の須藤シンジ氏 photo by Naoko Hirasawa

10日、東京・渋谷の渋谷ヒカリエ8階「8/(ハチ)」で、「2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展(以下、超福祉展)」(主催:NPO法人ピープルデザイン研究所)が始まりました。今年で2回目をむかえる超福祉展は、障害者をはじめとするマイノリティや福祉そのものに対する「意識のバリア」を取り除くことを目的としたイベントで、主に、ハンディキャップのあるなしにかかわらず「カッコいい」「カワイイ」「ヤバイ」と思える機器をそろえた展示と、渋谷区長からアーティストに精神科医まで、さまざまな分野の人が登壇するシンポジウムからなります。

会場にずらりと並ぶのは、様々なパーソナルモビリティ。ピープルデザイン研究所作成のコミュニケーションチャームをデザインしたセグウェイ、車いす使用者のPaolo Badano氏とセグウェイの出合いから開発に至り、砂浜やゲレンデでの走行にも挑戦したGenny、グッドデザイン大賞を受賞したWHILL Model Aなど、従来の車いすや福祉機器の常識をくつがえすようなスタイリッシュな乗り物の数々です。

コミュニケーションチャームデザインのセグウェイ(写真右)、Genny L 2.0(同左)

中でも目を引いたのは、ヨットの帆を立てたようなシルエットが美しい「&Y01」。これは楽器メーカーのヤマハとヤマハ発動機が、障害者とアーティスト、それに企業をつなぐNPO SLOW LABELのすすめるプロジェクト「SLOW MOVEMENT」のために開発した電動アシスト車いすで、車輪側面にはパーカッションがつき、帆の部分は薄型スピーカーとなっています。SLOW MOVEMENTは「年齢、性別、国籍、障害の有無などを越えて集結した人々が、街中でパフォーマンスを繰り広げることで<多様性と調和>のメッセージを広めていく」プロジェクトで、先月青山と豊洲で行ったパフォーマンスは「人間の身体と先端技術の融合によって描かれるオーガニックな世界が、東京2020オリンピック・パラリンピック以降の人と生命と世界のあり方を人々に問う作品」となっています。

同じくパフォーマンス用車いすとして展示されていたものに「車椅子DJ」があります。こちらは立命館大学映像学部望月研究室が車いすダンサーからの要望に応えて開発したもので、車輪に内蔵されたセンサーにより、車輪の動きに応じて音楽を再生・逆再生、早回し、そしてスクラッチまでできる、まるで車いすそのものがターンテーブルになったかのような斬新なものとなっています。「&Y01」とともに、車いすユーザーであるかに関係なく試乗してみたい魅力的な機器です。

車椅子DJ

14日には、この「車椅子DJ」を含む各種パーソナルモビリティの試乗のほか、電動スケートボードのような形状のHover Traxに乗ってプレイするラクロス「Hover Crosse」(Hover Trax以外のモビリティに乗ってもプレイできるそうです)や、デジタルデバイスを用い、頭と体を使うリアル陣取りゲーム「Jintory」など、技術で身体能力を拡張すると話題の「超人スポーツ」を体験できるパークイベントも企画されています。

ハンディキャップのある人を既存のスポーツに当てはめ、「できる」「できない」と判断するのではなく、ハンディキャップの有無にかかわらず楽しめる新しいスポーツを生み出していく。障害や福祉の持つ「暗さ」をくつがえし、福祉機器を「オシャレ」に変えていく。超福祉展はそんな、既存の福祉の概念を変えるアイデア、福祉を超えたアイデアと情熱が集まる場所です。そして、このアイデアと情熱を持ってすれば、2020年の東京は想像以上にインクルーシブな世界になっているのかもしれないという明るい予感をもたらしてくれるイベントでした。

パーソナルモビリティ「Luggie」で渋谷を散歩する参加者たち

超福祉展は、16日までの開催です。近未来の東京を体感したい人はぜひ訪れてみてください。



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平澤 直子