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スラム火災の悲劇を起こさせない!
南アフリカ発の新しい火災報知器

2015.12.04 宮原 桃子

11月25日にフィリピンのマニラ近郊のスラムで、大規模な火災が発生し、家屋800戸以上が焼失、約2000人が焼け出されました。幸い死者は出ませんでしたが、多くの人びとが家や財産を失いました。多くの国々に存在するスラムでは、火災事故が頻繁に起こっています。スラムには、貧困層が廃材などで建てた家が密集しています。人口密度が高いうえに、人びとが料理や暖を取るために直火を使うことも多く、また不法に引き込まれた配線などからの漏電やショートのリスクもあり、ひとたび火が出れば猛烈な勢いで広がります。貧しい人びとにとって、家や家財を失うことは大きな打撃であり、暮らしはさらに困窮します。

このような事態を防ごうと立ち上がったのは、南アフリカのベンチャー企業「ルムカニ」。南アフリカでも、2013年元旦にケープタウンの大規模スラムで火災が起き、4000人以上が家を失った事故がありました。これを受け、ケープタウン大学で火災感知技術の研究に取り組んでいた講師と学生たちが、熱上昇率を感知する火災報知器を開発し、ルムカニ社を創業して2014年11月から販売を開始しました。火災報知器は煙に反応するものが一般的ですが、直火を頻繁に使うスラムでは日常的に煙が出るため、家の中の温度の上昇率によって作動する火災報知器は有効だと考えられます。さらに火災の広がりを未然に防ぐため、この火災報知器は周囲の世帯にも知らせる機能があることが特徴です。半径40m以内にある火災報知器は、ラジオ電波を利用して互いに火災を知らせあう機能があるほか、携帯電話のショートメッセージに通知することも可能です。製品価格は120ランド(約1030円)で、これは南アフリカでは鶏2羽に相当する値段で、低価格に抑えられています。

ルムカニ社の火災報知器は、これまで約3300個が設置され、すでに4件の火災を感知し被害を抑えることができ、地域からの評価も高まっているということです。スラム居住者のほか、政府や国際援助機関、NGOなどが主な顧客となっています。また同社は、米国テック・イノベーション博物館が社会問題を解決する優れた技術に贈る「テック賞」や、米国科学振興協会による賞などを受賞するなど高い評価を受けています。

スラムの火災問題については、居住設備や電力インフラなどさまざまな側面から環境自体を改善していく必要がありますが、こうした新しい技術によるコミュニティ全体での予防策は、さまざまな国で導入しやすい手法の一つになるのではないでしょうか。



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南アフリカ (アフリカ

宮原 桃子