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2011.09.22 瀬戸 義章
農地に堆積したヘドロをかき出す作業 photo by yoshiaki seto
仙台市沿岸部を南北に走る高速道路、仙台東部道路をくぐると、かすかに、すえた磯のニオイが漂ってきます。海岸からは4キロ離れており、海からのニオイではありません。一面に堆積した、大量の土砂から立ちこめているのです。仙台市若林区は農地が多く、遮るものの少ない平野です。3月11日、7メートルもの高さで沿岸を呑み込んだ大津波は、4キロ進んでなお1メートルの高さで、民家を、工場を、田畑を襲い続けました。最後に、高さ6メートルの盛り土構造である仙台東部道路によって防がれるまで。
仙台市で津波被害を受けた農地の面積はおよそ2700ヘクタール(PDF)。これは、被災自治体のワースト3に入ります。津波が運んだ海底の泥は、やがて腐り、ヘドロとなりました。その量は、130万立法メートルと言われています。仙台市は、災害廃棄物のリサイクル率を阪神大震災と同様の50%にすることを目標に掲げており、この膨大な量のヘドロをどう処理するか、頭を悩ませています。
一つの方法として注目を浴びているのが、ヘドロを地盤材料として再資源化する「ボンテラン工法」です。「ボンテラン」は、フランス語で「良い土」という意味。この工法は、土木の世界にもともとあったリサイクル技術で、建築現場や工場から出る汚泥の再生に用いられてきました。水分を多く含む土に、新聞紙などの古紙を混ぜていきます。すると、古紙の繊維が水分を吸収し、セルロースが土に絡まるため、全体の強度が増すのです。こうすれば、ヘドロに含まれる塩分や重金属、発生する悪臭をほぼ封じ込めることができます。ボンテラン工法により再生した汚泥は、盛り土や埋め戻し材、屋上緑化用土壌として活用されてきました。
今回のヘドロもこの工法で再資源化しようと、9月1-3日、東北大が宮城県利府町で実証実験を行いました。土壌は、海岸沿いを走る塩釜亘理(わたり)線(県道10号線)のかさ上げに用いられる予定です。海のすぐ近くに盛り土構造の道路を敷くことで、防災機能を持たせることが狙いです。また、土木学会の試算では、この工事で津波堆積物の80万立法メートル分が活用できるようになります。災害廃棄物のリサイクルと防災に役立つ、一石二鳥の取り組みだといえます。
関連するURL/媒体
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1062/20110902_11.htm