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2012.01.10 瀬戸 義章
Google Earth上に表示される放射線量。赤いほど線量が高い。水色の部分は除染をした道路。photo by yoshiaki seto
2011年11月末に福島県を訪れたときのこと。インタビューの中で「何をつくるにしても、センリョウが一番問題だから...」と言われて、一瞬「?」が浮かびました。それは、「放射線量」のことでした。
朝のニュースのテレビ画面には、「今日の放射線量」のテロップがL字型に流れています。地元紙「福島民報」には、食品の「放射性物質の測定結果」。映画館の入口には、放射線量を測った手書きの黒板が置いてありました。ここでは、日常生活をおくるうえで「放射能」と向き合わざるをえないのです。ひとくちに除染といっても、どこから手をつけたらいいのか。誰だって、自分の家の前からはじめてほしい。
そんな中、郡山市で地質調査を行う山北調査設計が、放射線量測定事業を始めました。1秒ごとに線量を計測し、地図上に色分けして結果を表示するので、パッと見て、リスクの軽重が分かる仕組みとなっています。
米軍が開発した測定器を、プリウスの助手席に搭載。子どもたちへの影響をいちばんに考え、地面からの高さが50センチとなるよう調整しました。あとは時速20キロでゆっくり走るだけ。300、400世帯の町内会の場合、2時間もあればすべての道を測ることができます。
「もともと、私たちは地質調査を専門にしていました。道路や建物を作るまえに、地下の構造がどうなっているのか、調査し、解析する。見えないものを見えるようにすることを、ずっとやってきたんです」
そう話す山北調査設計の代表、林英幸さんは、もともと国土交通省の災害調査を担当していました。阪神大震災・中越地震など、現場経験も豊富です。オフィスに貼られた郡山市の放射線量マップは、業務終了後、深夜2時に自ら車を走らせて測ったものです。
林さんの行動の源泉は、いわき市の避難所で、小学校3年生の男の子から聞いた一言。
「ぼく、生きてていいんですか?」
地震が起きたのは、下校時刻のあと。早く家に帰りなさいという言いつけをちゃんと守った同級生のほとんどが津波に流され、遊んでいた自分たちが残った。その子が抱える罪の意識に衝撃を受けた林さんは、炊きだしなどの緊急支援だけでなく、本業でもできる限りのことをする決意をしました。まずは福島県全体の詳細な計測マップ製作を目指します。
「まず、現実を正確に知る必要があります。あいまいな情報は不安しか生みません。『こういう具体的事実があるのなら、こう対処すべきだ』そう決意すれば、人は強い。私たちの調査が、次の手につながる起爆剤になればと思っています」
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